「監督は王様なの」



シャリシャリ、と涼しげな音と共にアイスキャンディを齧りながらも気怠そうに言った彼の視線は此方には全く合わせない。今の彼の興味は大量の資料と液晶の中の選手たちにある。それがほんの少しだけ気に食わない。



「王様だから、王様は国民の事も考える」

「そうなると僕は、王子くらいが丁度いいかな」



後ろから抱きしめるようにすると、ちょっとアイス食べにくいんだけど、とまるでムードのない事を言って少しだけ身じろぐ。こんなのらしくないという自覚はある。こんな、彼氏に放っておかれて嫉妬している彼女みたいな事をまさか自分がするなんて。



「それでいいんだよ。コートの中に居るお前らは、余計な事考えないで楽しくサッカーしてればいいの」



それがお前らの仕事なんだから。
言葉を返すまでもなくまた液晶画面に食らいついてしまう王様の仕事熱心さには呆れてしまう。でも王様だって、いつも国民達の事を考えてたら疲れちゃうんじゃないのかな。ねえ王様、他の国の研究もいいけどさ、今はちょっと休憩して、ねえ。










此方を向いて御覧?
(少し休んで、さあ)

title:伽藍