言葉に出さなきゃ伝わらない気持ちもあるよ。

そう言った旧友の表情は切ないくらいに痛々しくて、何で新羅ががそんな顔するの? そう笑えば、笑い事じゃないだろう。と表情を少し歪ませた。
旧友は愛する彼女に危害のない様々な事には傍観に徹して居たから純粋に珍しいと思った。そしてふと思う、彼女にも表情があれば今頃その綺麗な顔を盛大に歪ませて居るのだろうか、あぁ、確かにそれは嫌だろうね。



「言葉にしなきゃ伝わらない、かぁ……伝えたい事もないから大丈夫だね」

「嘘つきだね臨也は」

「俺は嘘はつかない主義だけど」



儚いとは人の夢と書く。だから人の見る夢は儚くて美しい。ならば人智を越えた怪力、ある種人の夢をそのまま体現した彼はどうなるのだろうか。
ねえシズちゃん、この世界は君にはどう見えてるの。人の夢は移ろいやすくて儚くて、いとも簡単に壊れてしまうから、だからシズちゃんもいつか壊れてしまうのかな。まるで想像がつかないけど。



「ただ綺麗だと、思ってるだけだよ」



きっと今の俺は情けないくらいに緩んだ表情をしたんだろう。目の前の旧友が、呆れたように溜め息をついたからだ。口を付けた珈琲は既に温くなっていたけれど、やけに心地良いものだった。










まるで二人の温度のように
(ぬるくとけてしまえばいい)