子供はまぁ、嫌いじゃない。
基本的に喧しいけれど素直だし、自分の意見を恐れず突き通すし、大人になるとなくしてしまうものを沢山持っている。羨ましい存在だよね、と言えば後藤と有里は何とも言えない表情をした。どういう意味か、とは敢えて聞かないけど本当に失礼だなー。

精神年齢が近いんじゃないですか? と有里には言われた。歳上を敬う気持ちとかないのかねあのワーカホリック娘は。けれどまぁ、こうして子どもと一対一で対峙してみると、何とも言えない空気が流れるものだ。



「……」

「何、サッカー好きなの」



こくり、と頷く。最近は親の躾が宜しいようで、知らない大人とは話すなとかそういう教育なんだろう。地域の一体感と言うか家族感は下町の美徳だというのに、世知辛い世の中になったもんだなぁ。
ボールを大事そうに抱えたガキは、俯いたままこちらを見ようとしない。内気な子なのかね、うちのユースのガキ共はウザいくらいに元気があるからこういう子は新鮮だ。茶色のふわふわした髪の毛が風に揺れる。そして口を開いての第一声は酷いものだった。



「なぁ、おっさんは」

「うわ何このガキ酷い、確かに30過ぎたらおっさんかもしんねーけどさぁ」



前言撤回。どんな教育してんだよこのガキの親は。俺は達海って言うの、そう言えば少年は名前を咀嚼するようにたつみさん、たつみさん、と繰り返した。出会って数十分にして初めて見る年相応な一面に思わずこいつもやっぱりガキなのか、と納得して、微笑ましいような気持ちになる。その気持ちは一瞬にして壊されるけれど。



「たつみさん、おれの親になって」

「おー、…………は?」



家出か、反抗期か。今時のガキは随分反抗期が早いんだな。全く要らない情報だ。
ただその少年の目は真剣そのもので、まるで意味がわからなかった。親って、そもそも俺まだ結婚もしてねえんだけど、色々すっ飛ばしすぎじゃないかね。










クソガキよ初めまして
(とりあえず、警察?)

title:伽藍