言葉を交わしていたい訳じゃないけれど側に居ないと胸の奥がチリチリと苦しくて、泣き出したくなる。きっと彼は昔の自分に重ねて優しくしているだけなんだとは分かっている。あの王様の周りには良い選手が集まっているから、俺の側に居るのは同情だって、同調だって事くらい、子供じゃないんだから分かっている。
それでもこうしてブラウン管の画面を食い入るように見つめる達海さんを見ていると、俺が隣に居てもいいのかなぁ、とはぼんやりと考えてしまう。チームが同じ訳じゃないし、共通点の希薄な俺たちだから、どうして隣に居るのが俺なんだろう。その疑問を言葉にしてしまった時の達海さんの驚いたような表情に、少しだけ後悔した。



「んー、持田は空気みたいなもんだよ」

「……はぁ?」

「存在感とかじゃなくて、何か居て当たり前っていうか、居ないと違和感みたいな」



お前みたいな存在感の塊が空気だなんておかしいけどなー、そう言いながらも達海さんはまた画面の向こうへ意識を向けてしまう。
それは一番じゃなくても隣に居ても良いって事なのだろうか。だって俺も彼も一番は譲れない同じものだから。お互いに同じ娘に惚れちゃったみたいな可愛いものならいいのに、良い歳して、ボールを追うことに焦がれてるだなんて。
色々ぐるぐると考えていた物が一瞬でどうでも良くなった。同情でも同調でも構わない。今、ここにこうして隣に居ることに代わりはない事だから。










何も言わないそこにあるだけ
(いっそ本当になれたらいいのに)



title:伽藍