・エアスケブ:甘い臨静
ありがとうございました





散々殺し合いをしてきて何を今更、と旧友には笑われてしまったけれど、この気持ちだけは本当なんだ。
二人一緒にずっと居られることが幸せだと思えた。

シズちゃんは強いのにどこか朧気で、儚いから、そっと消えてしまわないように守ろうと心に誓った。今まで殺そうとしていたのに、守りたいだなんて。でも俺はシズちゃんの目が見えなくなっても、歩くことが出来なくても、どんな時も俺が手となり足となる。それはシズちゃんの為じゃなくて、俺の為だから。そう素直に思えたんだ。


思えば出逢ってから歩んできた日々は歩むと言うよりは走り回っている日々だった。散々命をかけた追いかけっこをして、決して良い思い出ではないけれど、二人で過ごした時間は多くて、言葉に出来ない程に。


初めて自分の感情を知ったとき、信じたくても信じられなくて。何度も捨ててしまおうと悩んだけれど、シズちゃんを知れば知るほどに愛しさが増していって、情けないけれどしがみつくしか出来なくなっていった。

俺は傷つける事しか出来ないから、と震えていた白く細い手を握りしめたいと思ったのは、いつの事だったかはもう思い出せないけれど。俺を信じてくれるシズちゃんが居る限り俺は、迷わずに誓いを守れるから。





「……どうしたんだよ臨也」

「え?」

「珍しいな、お前がぼーっとしてるの」

「シズちゃん、俺……どうしようもないくらいシズちゃんが好きなんだ」



シズちゃんと出逢って、もうすぐ10年が経つ。俺のまだ短い人生の半分近くをシズちゃんと過ごしていたんだ。笑って怒って泣いて、喜び分け合って「幸せ」だと言って、二人寄り添って、命尽きるまで。ずっと。



「知ってるよ。バカ」



小さく笑うシズちゃんが堪らなく愛しくて、じんわりと胸の奥が暖かくなる。
白く細く震えていたあの日の君の手は、俺がずっとずっと離さないから。










君が笑ってくれたら
(それだけが願い)