・エアスケブ:ヤンデレ日々デリ
ありがとうございました







――デリック、貴方を迎えに来ました




そういって手を差し伸べられた時、王子様と言うのは本当に居るんだと、自分がお伽噺の登場人物になれたような気がした。

日々也はみんなに優しいから、時々不安になる。本当に、俺なんかでいいのだろうか。俺は兄ちゃんみたいに愛想が良いわけでもないし、津軽みたいに落ち着きがあるわけでもない。勿論オリジナルの静雄とも違う。
何も持っていない空っぽな俺をどうして日々也は愛していると言うのだろう。それが同情、ならば。一度悪い方向に考えてしまうと囚われてしまう。結局、俺は自分さえも信じられないというのに日々也に愛される資格なんてあるのだろうか。

どうしても堪えられなくて日々也に辛く当たった。同情ならいらない、思ってもいない好意を与えられても嬉しくないと。
日々也はいつもみたいに困ったような表情をすると思ったけれど、その表情は今までに見たこともないくらいに冷たく、恐い。足が震える、どうしよう、恐い、怖い、怒らせた、俺がバカだから、嫌われ、た。



「他に好きなヤツでも出来たの?」

「は………?」

「ふざけるなよ……そんなの絶対に赦さねえ」



いつもの日々也からは想像出来ないくらい乱暴で荒い口調に驚き、何も返事を返すことが出来ないで固まってしまった。
日々也も自分の変化に漸く我に返ったのか、小さく舌打ちをしながらマスターにも隠していたのに、と悪態をつく。つまり、この日々也が本当の日々也で、それを知っているのは、俺だけなのか?



「愛してるんだよ。誰よりもずっと、ずっと愛してる、デリック、お前は俺だけのモノだろ?」

「……………ほん、とに……?」



愛してくれるのか?
俺の事を、俺だけを。
縋るような気持ちで日々也のマントを握り締める。俺はきっと今、酷く情けない表情をしているんだろう。それなのに日々也は、そんな俺の手を取り、瞼にキスをする。



「どんなデリックでも俺は愛してるよ。だからデリックも俺だけを見て、俺だけを愛して」

「俺が、愛してるのは日々也だけだから、だから……」



捨てないで、という言葉は日々也の唇に飲み込まれた。
なぁ、もう俺にはお前しかいないんだよ。お前が望むなら俺は何でもするから、だから、お願い、俺とずっと一緒に居て。
ボロボロと泣く俺の涙を舐め、日々也は耳許で甘く囁いた。



「一生、離すわけないだろ?」










優しく縛る
(痛みに気づかないくらい)