・青祓 メフィさんとゆきちゃん











「この度はお悔やみを申し上げます」

「…………フェレス卿」



尊敬する養父が亡くなって、一番辛い時期だというのに彼は何事もなかったように振る舞う。しかしその薄青い目が少しだけと赤くなっているのは気のせいではないんだろう。
最年少で祓魔師になった天才とはいえまだ15歳の少年、大人びた言動や態度をしていても実際はただの子供だというのに。幼い頃に自分と兄の生い立ちや境遇を聞かされ、それに立ち向かうために闘ってきた彼を、ただの子供と云うのは間違っているのかもしれないが。



「そうですね、後見人とはいえ父親にはきっとなれません。でも兄代わりにならなれますのでお兄ちゃんでもお兄様でも好きな様に呼んで下さい」

「…………」

「どうかしました?」

「……いえ、お気遣いは嬉しく思いますが、兄はあの馬鹿一人で充分なんでお気持ちだけ頂きます」

「おや、それは残念ですね」



遠慮しなくても良いですよ、と笑えば平静を装ってはいるものの少しだけ引き攣った頬と眉間の皴が増える。本気で嫌なんだろう。悲しいなあ、と肩を竦めれば思ってもいないくせに、と言葉が零れた。直ぐに我に返ってしまったようで俯く彼からその表情は見えない。珍しい物がみれたと思ったのに、残念だ。
気まずいのかそのまま彼は事務的な挨拶を交わし逃げるように部屋から出ていく。静かに閉められたドアはまるで彼自身の心のようだ。自分の内に全てを背負いこんでで固く閉じこもってしまう。広い意味で云えば我々だって兄弟であるというのに寂しいものだ。それにしても本当に肩の力が入りすぎている、それだとあっという間に――……



「さて、いつまで持つのか、見物ですね」



早くこちらへ落ちておいで、そしてもっともっと楽しませてくれ、小さな弟達。
ああ、やはり物質界は退屈しない。










楽しい愉しい玩具箱
(厭きさせないでくれよ)