・学パロ?
・いじめられっこ静雄







ずぶ濡れになった制服を乾かしに屋上へ上がったのが間違いだったんだろうか。
とはいえ後悔先に立たず。ジャージも使い物にはならないし、教室へ戻るのも億劫だったから仕方ない。
いつからだろう。最初はそんな事はなかったのに「違い」は如実に表れて、集団は「違う」者を排除しようと躍起になって。誰が言い出したのか、誰が行動に起こしたのが最初かなんてもう思い出せないし知らない。知った所で何かが変わるわけでもなんでもないのだから。



「そりゃだってシズちゃん、化け物だから」

「……」

「化け物が人間と同じ空間に居るのがみんな気持ち悪いんじゃない?」

「……だまれ」

「俺は差別はしない、化け物相手でもこうして話してあげてる。俺ってば何て心優しいんだろうね!」



そういって薄ら笑うこいつが、悪魔みたいだと思った。
それでも今の俺に話しかけてくるのは、幼馴染を除いてはこいつくらいだ。
嫌いだシズちゃんなんて死んじゃえばいいのにねえいつ死ぬの?と問いかけてくるこいつは、間違いなく悪魔そのものだと思う。一度だけ、こいつに怖くないのか、と聞いたことがある。こいつはその質問を嘲笑った。それは傲りだと、笑っていた。俺にはわからなかったけれど、きっと馬鹿にされたんだろう。このノミ蟲――、折原臨也はそういうヤツだ。ただ、今の状況ならばノミ蟲は俺なんだろうか。










我慢の限界だったのかもしれない。
よくわからないけれど、俺は教室で思いっきり暴れたんだと思う。いつも通りに登校してきて、いつも通りに俺の席がなくて、そこまではいつも通りだった。ただ、違うのがあいつらが弟を、幽の事を悪く言ったから。そこからの記憶は凄く客観的な物だった。机が吹っ飛んで、窓ガラスが割れて、壁に穴があいて、脅える、あいつらが、いて。
新羅が俺の手当てをしながら小さな声でごめんね、と言った。どうしてだ、お前は何も悪くないのに。どうしてお前が謝るんだよ。ぽつり、と包帯に落ちて広がった水滴をみて俺は自分が泣いている事に気付いた。







「言ったでしょ? 俺は差別はしないって」

「……答えになってねえよ」

「差別はしない、区別はするよ」

「意味がわからねえんだよ」

「シズちゃんは化け物だって、だから俺の愛する人間じゃない」



化け物を孤独にするのは簡単だ。
元々が孤独なんだから更に人から突き放せば、そうすればどんどん一人ぼっちになっていく。
そうして孤独に慣れていっても欲するものがある。俺はそれをこの化け物に与えるんだ。
そしたら、きっと。




「でも、俺は………ねぇ、そうだ」



シズちゃんを化け物としてなら愛せるよ。
そういって、悪魔は微笑んだ。









全て予定調和
(仕組まれた告白)