・雰囲気軍パロ臨静






――どうにかしてくれないかしら。貴方が行かないと行きたくないと聞かないのよ

――…………え?

――公私混同だなんて、もう少し立場を弁えて欲しいのだけれどね

――違うから。それに波江さんにだけはいわれたくないんだけど



あらそう、じゃあ頼んだわ。とだけ残して秘書は部屋から出ていってしまった。そんなこと言われても…、正直、かなり困る。チラリ、と見やれば不貞腐れたように視線を逸らす臨也がいつもの澄ました態度とは違くて年相応というか、少し幼く見えたからだろうか。だから柄にもなく、引き受けてしまったのだ。
今となっては、どうして断らなかったんだろうと後悔している。



「……はぁ」



ざわめく会場は、居心地が悪い。階級の低い俺にはよく分からないが偉い方同士、積もる話とやらがあるんだろう。あれだけ嫌がっていた臨也も社交的な元の性格や地位などもあって人に囲まれている。
まぁ、なんというべきか、予想通りだが暇だ。 一応臨也の護衛という名目で同伴しているものの、彼奴がそう易々と敵襲に合うわけがない。手持ち無沙汰になってしまった俺は、邸内を暇つぶしに探索してみることにした。








「……ここ、どこだ」



どれだけ広い屋敷なんだ。いつの間にか外に出てしまったようで、邸内にも負けない広さの庭を歩き回る。庭と言うより、森のようだ。自然は好きだし少なくともあの騒がしい室内よりは全然落ち着く。もう少しのんびりとしたかったが、そろそろ戻らなくては。そう思った瞬間に後ろから人の気配を感じた。




「!!??」

「驚かせたかな?」



いやあごめんね、と気さくに笑うサングラスをかけた男性が後ろには立っていた。目が悪いのか白杖をついては居るが、人の気配なんてついさっきまでなかったのに、何故。そういえばこの人には見覚えがある、確実なのは自分なんかが暢気に談笑出来るような相手ではないという事だ。



「も、申し訳ありません……、」

「畏まらなくてもいいって、おいちゃんは君と話してみたかったんだ」

「え……?」



この人が、何故俺を知っているのだろうか。と一瞬考えてみたが直ぐに納得がいった。大方俺の異常な怪力が原因なんだろう。未だ穏やかに笑っている彼が、少しだけ怖く思えた。無視なんて出来るわけがないし、だからといって気軽に話せるわけはない。考えあぐねていると焦ったような声と、走ってくる足音が聞こえた。



「っ、シズちゃん!!」

「臨也……?」

「勝手に居なくならないでくれないかな……、無駄な労力使うから」

「残念、お迎えが来ちゃったね」

「……、うちの部下がご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」



行くよ、と臨也に思い切り手を引かれて引き摺られるようにして臨也の後ろを歩く。ちらりと後ろを見ると、既にそこには人が居た気配さえも跡形もなく消えていた。










ファーストコンタクト
(興味をもっただけ)