・臨也と静雄が双子
・エリ組の某曲モチーフ
・二人とも頭がおかしい






無邪気に笑う可愛い弟は、生まれながらにして神に愛されていたのだろうと、神なんて信じていないくせにそう思った。
生憎どこかで歪んでしまった俺とは違い、純粋で素直な弟。俺たちは同じ細胞から分かれた兄弟だから、二人で一人だと信じて疑わなかった。
それでもお互いに反抗期を迎えれば衝突する事も少なくはない。弟が可愛くて、愛しているけれど、それと同じくらい憎らしくて、死んでしまえば良いと願ったこともあった。


あの子は他人とは少しだけ違う、そんなことは隣に居た俺が一番良く知っている。でもそんなの些細な違いなんだ。
人より少しだけ力が強いだけで、シズちゃんは優しい子なのに、バカな上級生の争いに巻き込まれている被害者なのに。



「……シズちゃん」

「お前には関係ないから」



もう何度も繰り返された教員からの呼び出し。先に帰ってろよ、と何事もないように笑うシズちゃんの後を内緒で追っていた。散々罵声を浴びせていた教員はシズちゃんが何も言わず手も出さない事に調子に乗ったのか、その頬を叩いた瞬間に自分の何かが弾けたような気がした。

心無い言葉と仕打ちが、どれだけシズちゃんの心を傷付けたんだろう。あの教師も上級生も今頃、のうのうと生きて、笑っているのだろうか。……気持ち悪い。想像するだけで吐き気がする。
それでもシズちゃんは優しい子だから、自分を責めてしまっているのだろう。あの愚かな連中を許してしまうんだろう。それでも、俺は許さないし、絶対に許せない。



「罪深き者は、等しく灰に還るんだから」



俺にとってこの世に蔓延る全てのものはどうでもいいし、代えはいくらでもある。人間を愛してはいるけれどそれはつまり人間なら誰でも構わないと言うことで、失うことに未練はこれっぽっちもないのだから。
けれどシズちゃんだけは代わりがないんだ。殺してしまいたくなるくらいに最愛の俺の弟は、世界でただ一人、シズちゃんだけ。

あぁ、シズちゃんを抱き締めたい。泣き虫なシズちゃんの頭を撫でて、額にキスをして、涙を止めてあげなくちゃ。







紅く咲く薔薇のように燃える光景を前に呆然と立ち尽くす。否、あまりにも衝撃的すぎて理解出来ない光景に、その場に膝をついてしまう。どうして、どうしてこうなった?
それは確かに昨日までは学校だったはずなのに、今では鉄屑と灰が折り重なって紅く紅く、双子の兄……臨也の目のように紅く燃えていた。



「シズちゃん! 大丈夫?!」

「い、臨也……」

「心配しないで、大丈夫だよシズちゃん。俺がシズちゃんをずっと護るから」

「……これ、まさか」

「シズちゃんは知らなくていいんだよ」



疑問を遮るように俺を抱き締めた臨也の眼はどこまでも紅いのに冷え切っていて、それでも抱き締めてくれた手は暖かい。
そうだ、こんなどうしようもない俺を理解して、何もかもを許して救ってくれるのはいつだって臨也だけだった。臨也だけが、俺を認めてくれて、臨也だけが、俺を愛してくれたんだ。



「臨也、ありがとう」



俺の言葉に臨也はいつもより優しい表情で笑い、小さい頃のように頭を撫でて額にキスを落とすと、溢れていた涙が止まったような気がした。










紅い焔に焼かれて
(さぁ、かえろう?)