テニスの王子様 [LOG] | ナノ
拍手SS/忍足侑士


冷静かつポーカフェイス、動揺などすることのない胡散臭い眼鏡。
結構、長い間観察して来たけども眼鏡の奥に隠された色は未だにハッキリはしない。
成績優秀かつスポーツ万能、素行・生活態度においても悪くない。
だからと言って全てがトップというわけでもなくトップクラスなだけ、それでもそれを悔む様子は無い。

圧倒的に欠落したような感情。喜怒哀楽が見えない男だ。



「敢えて聞くけど、ソレ俺のことかいな」
「他に誰が居るのよ丸眼鏡」
「ほならプラスして美形ってのも付けとけや」
「……所詮、それもトップ"クラス"なだけでしょ?」
「クラスだけ強調すんな」

発する言葉を聞く限りでは感情が表れているようにも思えるけどそれほどのものを感じるわけじゃない。
そう、強いて言うならばこの話題なんかもどうでもいいことなんだと返事から読み取れる。
多少なりとも、異性から「観察されている」ともあれば動揺を含む感情がどっかから零れても変じゃないのに、だ。
私だって観察されていたなら少なくとも不快な気持ちになるし、宍戸観察をした時なんか変に動揺されて逆に申し訳ない気持ちになった。
趣味の人間観察においてここまで読み取れない人は初めてかもしれない。

「ちゅうか、他人観察して探ってどないするん?」
「スキルとしてそういうのも必要だと思わない?」
「思わへん。人は自分やないからオモロイんとちゃう?」
「面白さはさておき、相手の機嫌が悪い時なんかに逆撫でしないスキルは大事でしょ?」
「そんなん逆撫でた時にフォローすればええやん」
「結局フォローするんなら撫でなきゃいい、でしょ?」

私の言葉に彼は特に荒立てた感情も無く「ああ言えばこう言うわけやな」とただ笑った。
同じくらい冷静に「意見の相違ってことよ」と返してやれば「所詮、他人同士やしな」と言われた。

そう、結局は他人同士なんだ。
だから分からないことだらけでそれを観察するのは面白い。面白いから…私は人を見てるんだ。

「分かった」
「何がやねん」
「自分じゃないから面白い、面白いから知りたいのね」
「ちょお待ち。スキルうんぬんはどうした」
「知ればスキルに繋がるわよ」
「随分、勝手な解釈やなあ」
「勝手で結構。とりあえず、ワケ分からない忍足の観察は続行ね」

何も分からないから、観察しても掴めない人だから…面白い。

「何なん自分、俺のこと知りたいん?」
「まあね、興味ある」
「ふーん。ほな俺のこと、ミリ単位で教えたるわ」

手招きする胡散臭い忍足にちょっと近づいて耳を傾ける。
ミリ単位の情報に期待も出来なければそれによって掴みどころのない忍足が掴めるとは最初から思ってない。
ただ、私と同じくらい「ああ言えばこう言う」忍足が何を言って聞かせるのか、興味があった。

「これで声もミリ単位でいいわよ」
「そーかい。おおきに」

何をこっそり言って聞かせるのか、大きな手が耳元に触れた。

「俺も、お前のこと知りたいねん」



冷静かつポーカフェイス、動揺などすることのなく他人に合わせれるタイプ。
結構、長い間観察して来たけども目の奥に隠された色は未だにハッキリはしない。
俺と似たタイプ、だけど感情に流されたフリも出来る、面倒なことを進んでする俺とは違ったタイプ。

圧倒的に欠落したような感情。本体の喜怒哀楽が見えないお前のことを――…



つまり…似た者同士な話。
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