それはまるで戯曲のような
接触-2/2

誰かと登校したり、下校したり、寄り道するのは何年ぶりだろうか。
放課後に鳴上さんたちと合流し、近所のデパート――ジュネスのフードコートへ向かった。

「桜庭さん、だっけ? 私、里中千枝! 今朝はまともに挨拶できなくてごめんね」
明朗快活という言葉がよく似合う里中さん。
前髪を伸ばして顔を隠し、三つ編みおさげのザ・根暗な私にもニコニコと話しかけてくれる。

「いえ……。私、桜庭架音です。よろしくお願い致します」
「わっ、すっごい礼儀正しい子だね! 架音ちゃんは花村の再従姉妹なんだっけ?」
「そうです。……あ、陽介くんが里中さんに何かしてしまったようで、すみません」
「えっ? あぁ、いやいや! 架音ちゃんは悪くないんだし、謝ることないよー」

私達のやり取りを遮るように
「おい、架音! 保護者ぶってんじゃねぇよ!」
と陽介くんが怒りながら、たこ焼きを持ってきた。

ビフテキじゃないんだ……と、たこ焼きを見ていると、
同じことを思った里中さんからブーイングが飛んだ。
曰く、完全に肉の口だったらしい。肉の口ってなんだろう。
お小遣いが足りなくてビフテキ買えないなんて、すごく高校生っぽい……。

たこ焼きを冷まそうと息を吹きかける。
ちらりと周りを見ると鳴上さんがテレビを見ていた。
内容は先日発生した事件だ。

「その事件、まだ犯人が見つかっていないとか……物騒ですよね」
「そうだな」
「意外と犯人がその辺にいたりして!」
陽介くんが軽口を挟む。
やめてよ気持ち悪い……と里中さんが身震いし、
「もっと楽しい話をしようよ」と提案する。

楽しいことかは分からないが、先日から気になっていたことがあった。
「マヨナカテレビって、ご存知ですか?」

マヨナカテレビという単語を聞いた里中さんの顔がパァッと明るくなる。可愛い。
「そうそう、マヨナカテレビの話しよ!」

話を聞いたところ、雨の日の夜0時にテレビを見ると、運命の相手が浮かび上がるとのことだった。
早速、陽介くんが茶々を入れ、里中さんが怒り、彼の胸ぐらを掴んで揺さぶる。

「すごい。陽介くん、脳と口が直結してるの?」

「おま……! それどういう意味だ!」
「アハハッ架音ちゃん、もっと言ってやって!」

……失言。脳と口が直結しているのは私も同じかもしれない……。

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