今日もカノンはリーバー班長に頼まれている数式を脳内で解きながら任務を遂行していた
今のところ滞りなく進んでいる。彼がいなければ。
「なーなーカノン、ここの噂知ってるかー?」
『………』
聞こえない振りをしつつ目的地へ走る
走りながら、隣で都市伝説や怖い噂をひけらかす青年の脛を蹴った
「いって!カノン…痛いさぁ…」
問答無用で蹴り続ける
「痛いって!!ゴメンナサイ!止めて下さい!!」
目に涙を溜めながら必死で懇願してきたので、蹴るのを止めて走ることに集中した
未だ涙を浮かべ、蹴られた足を庇いながら走る青年は"ラビ"。
燃えるような朱の髪が印象的だ。
『アンタ、いい加減にしなさいよ。次やったらイノセンス使ってその口訊けなくしてあげるからね』
ギロリと睨めば体を震わせ、すみませんでしたと謝罪する。
『―ていうか、なんでまだそんな下らないことしてんの?』
彼もイタズラメンバーの一人だ。
大体彼とコムイのせいで暗がりは怖いし、夜のトイレも一人では行けなくなってしまった。
「えーと、カノンが昔のままだったから」
話し方から察するに、軽い気持ちでやってたらしく、その事にまた苛々が募ってゆく。
声を張り上げてしまわないように、小さくため息をついて気持ちを落ち着けた
『…見た目の事かしら?好きでこんな体になったんじゃないわ』