――食後、リナリーに案内され、着いた先は両親と寝泊まりに使い、母方の自室でもあった部屋だった。
『懐かしい…』
幼少期に描いていた両親の似顔絵、持っていないと寝られなかったタオルケット、両親の残したアルバム等、全てがそのまま残っている
『思い出して辛いと感じたから、捨てても構わないと言ったのに…』
今では愛しさしか感じられない
「皆もね、捨てようと思ったのよ。でも、やっぱり捨てきれなくて…」
母は聡明なエクソシストであった。元帥でなくとも、代わりに指揮を執る事が出来るほど優秀な人物だったと聞く。
一方、父は勇敢なファインダーであった。周りからの人望も厚く、彼が向かった任務は必ず達成することが出来たという。
------------------------------------------------------------
パラパラとアルバムを見る
『――うん。捨てなくてよかった、わね』
本心からそう思えた
暖かい感情が、心を満たしていく
「ふふ、そう言って貰えると嬉しい……っ………!」
アルバムから目を離し、リナリーの方を見れば、ぽろぽろと涙が溢れていた。
ぎょっとして彼女に近寄る
『ちょ、ちょっと?なんでアンタが泣くのよ!?』
ポシェットからハンカチを取り、泣き出した少女の涙を拭っていく
「あ、あはは…変よね」
『…まぁ、変ね。どうしたのよ急に。――――あ』
そうだ、彼女も自分と同じく幼い頃に両親を亡くしていたのだ
しかも彼女はたった一人の家族であるコムイとの間を引き裂かれ、再会するまでずっとイノセンスの適合者として、廃人寸前まで軟禁されていた
家族とのアルバムは愚か、記憶すらほとんど無いに等しいだろう