崖の上にそびえ立つ黒い巨塔。
崖の下で座り込む、琥珀色の髪の少女はそれを眺め
「はぁ…バカじゃない、わざわざこんなとこに建てて。バカよバカ」
お得意の口癖と、毒舌を吐いた。
「どこに建てたって、湧くものは湧くのに。それより入口どこかしら…ちょっとコメット、もう一回探してきて頂戴よ」
後頭部にいる小さな相棒に話し掛けるが、相棒はだんまりを決め込む。
なぜなら、先程まで1時間近く崖の周りをぐるぐる回って入口を探していたからだ
もう疲れた。と、言わんばかりにしがみついて離れない。
羽もだらりと垂れている。
「…仕方ないわね。登ればいいんでしょ登れば。上に行けば流石にあるわよね、うん。」
ちらりと見やるは客人を招き入れるための水門。今は何故か固く閉じられている
よいしょ、と少女は立ち上がれば、ゆらゆらと船は揺れ、少しよろけた。
「…っと。危ない危ない。
折角の船、調整しながらやんないとね」
手を掲げ、腕輪を見つめる。
腕輪には星を象った宝石、両隣には白と黒の小さな丸い水晶がついており、日に照らされキラキラと輝いた。
相変わらず綺麗だなんて思い、笑みがこぼれる。
そして一呼吸おき、
「イノセンス―――発動。」
そう唱えた。
すると、呼応するようにシャランと音を奏で、腕輪は光りだす。
「"水星(マーキュリー)"!」
その瞬間――
大きな水柱が上がった。