エシラ

買い物帰り、ふと周りを見ると、少女が一人沼の前で座り込んでいた。


そこは、底無し沼だと言われているから、近づく奴は滅多にいない

危なっかしいな……気になったんで、話しかけてみる


「なぁ」


少女は返事代わりにびくり、と身体を揺らした


反応するものの、こちらを見向きもしない

「聞こえてるんだろ、こっち向けよ」





『ゃ……』


蚊の鳴くような声で、俺を拒絶する


「向けって」


『魔女の呪いなの。見たら死んでしまうわ』


だからほっといて、と小さく返してきた



ちらりと覗く細い腕には、うっすらと傷が見える。
足にも、首筋にも。



あぁ、いつの世にも酷い奴はいるんだな、と一つため息をつく。


「じゃあそのままでいいから聞け。そこの周りはぬかるんでるから不用意に近付くな」



『ほっといてよ』


「あのなぁ…こっちは心配して」


『何も知らないクセに。』



少女はフラフラと立ち上がり、薄汚れたワンピースが舞う。


そして


「………!」


沼に足をつけ、笑った。
もちろん、こっちのことなんて目にも留めてなかったけど。


「…っばかやろっ!!」

手を伸ばし、身体を引き上げる


「何やってんだよ!自殺なら余所で…いや」

余所もダメか。


『………?』


少女はきょろきょろとつぶらな目を、しきりに動かしている。
焦点が合っていない




まさか



『ねぇ、今は夜なのかしら』
暗くて温かくて、心地が良いわ。
そういって、俺の手にそっと手を重ねた


「…そうか…」

お前は………。



『どうしましょう、これじゃ帰れない。帰りたくなくなっちゃった。』
にこ、と笑ってみせた時の顔は、恐ろしい裁判から目が覚めた少女のようだった。

「じゃぁ、俺のところへ来いよ」


それが、その少女との出会い。






『アーサー』

「ん?」

『紅茶を、いただけるかしら』

「わかった、用意するよ。名無子」







それはまるで、不思議の国をさ迷った少女のようで。
今は穏やかな日々が、ただ続いていた。








 ※ Persona Alice / 初音ミク



意味不明+名前呼び最後だけですみませんorz


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