What's done is done






「奈月くん!」





彼女は確か隣のクラスの田中さんだ。学校でもまあまあ可愛いって噂の。





「奈月くん、私奈月くんのこと好きなん…」





いじらしげにそう言った田中さんは、まさに恋する乙女だ。いつかの誰かさんと否が応でも重なった。
どうやら俺はモテ期のようだ。





「よかったら付き合ってくれへん?」





故意なのか無意識なのか俺よりも頭一つ分背の低い田中さんが、俺を見上げて首を傾げた。
正直に言う。俺は関西弁が好きだ。
語尾に「ん」を付けたり疑問形とか最高に可愛い。田中さんってMっぽいし。





「…どうかな?」


「あ、えっと…」





黙り込んでいる俺に不安になったのか、田中さんが口を開いた。可愛いし、別に付き合えばいい。なのにすぐにYESが言えないのは何でなんだ。





「ちょっと、考えさせて」





自分の吐いた言葉が自分で信じられなかった。



なんで考えさせてなんて言ったんだ。といくら考えても答えは出ない。あの場で頷けば良かったのに。今もそう思うしあの瞬間だってそう思ってたんだ。なのに……、





「はぁぁ…」





自分で自分のことが分からなくなってきた。可愛い田中さんに羞恥的な行為をしているところを想像したら興奮するのに。キスくらいあの場でも出来たのに。(けしてタラシというわけではない)





「はぁぁ…」





数学の授業にまったく集中できない。元々苦手な科目であるのに、さらに集中できないなんて次のテストは死んだな。
机に突っ伏し顔を左に向けると忍足と目があった。眉を顰めて俺を数秒見つめた忍足は視線を逸らし、それからはひたすらノートに向き合っていた。思い違いかもしれないが、ペンを持つ忍足の手が震えているような気がした。



What's done is done
(後悔先に立たず)




title by たとえば僕が


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