きみの言葉で泣いたわけじゃない





突然泣き出したりぜに、俺はどうしたらいいんかわからんかった。

元は俺が悪かった。俺が他の子と仲良くしたんがあかんかった。りぜが嫉妬深いことは誰より分かっていたのに。

暴れて俺を突き放そうとするのを無理矢理押さえ込んで抱き締めた。どないしたら、俺の気持ちを伝えられるんやろう。

わんわん泣くりぜは、ずるずると鼻をすすり嗄れた声で嗚咽をあげ、時に咳き込んだ。
恐る恐る覚束無い手付きで髪を撫でると、「俺が幸せにしたる!」なんて意気込んで告白したあの時が蘇る。

りぜは幸せなんやろうか。
いや、幸せなはずがない。幸せならきっと今泣いていないだろう。
俺は幸せにもしてやれんと、ただずるずると勝手に付き合わせとるだけやないか。





「りぜ、別れよか」





俺は勝手気儘にそう言った。でもそれが一番良い選択な気がした。





「…なんで?あの子に行ってまうん?」





涙をいっぱい溜めた瞳で俺を見て「やっぱりあの子がええんやね」なんてりぜは呟いた。

ちゃう。そうやない。ちゃうんや!
俺にはもう言い訳の言葉も出てこない。想いを口にすることもできない。

もう、どないせえっちゅーねん…、

最初は申し訳ないなんて思っていたのに、最終的に行き着いた先は苛立ちだった。





きみの言葉で泣いたわけじゃない
(同情の愛だから)






title by 休憩

prev | next

back