きっと綺麗な花は咲く
学校が終わったあとにみんなでカラオケに行く。これが私の毎日の楽しみだった。みんなといる時間が何より楽しかった。嫌なこと全部、その時だけは忘れられた。 財前が知らない曲を歌っている。私は謙也君にこそっと囁いた。
「帰りたくないね」
謙也君は「せやなあ」って呟くように答えた。謙也君達3年生はもうすぐ卒業してしまう。そうしたらきっとこうしてみんなで遊ぶことも少なくなってしまうだろう。 謙也君は私がもっとみんなと、謙也君といたいということ、解って言ったのかな。
「ねえ、謙也君」
「なんや?」
「もうちょっと、近くに座ってもいい?」
「ええけど?」
謙也君は首を傾げながら言った。ああ、やっぱり私の気持ち気付いてないんだな。謙也君だもん、仕方ないよね。なんて、もう半ば諦めかけている自分がいて、でもやっぱり謙也君に少しでも近くなると嬉しくなって、ドキドキする。財前の低い高音が"loving you"と音程を刻んだ。ああ、まったくその通りだ。
「やっぱり、帰りたくないなあ」
誰に言うでもなく呟いた私に、謙也君は「せやなあ」って呟くように答えた。
きっと綺麗な花は咲く (そこ、いちゃつくなや) (いちゃついてないっ!)
title by ポケットに拳銃
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