「だから壁は、どこにもないよ」
見えない壁はあるけど。
「恐らくリヴァイの知り合いはどこにもいないの」
漫画の中にならいるのかもしれないけど。
「あなたの常識は、ここでの常識ではない」
そもそも常識って何だよって私が聞きたいことだったりもするけど。
「あなたは、一人」
私もだけど。
「だから、私が君を保護してあげよう!」
太らせて食べるためにね!なんちゃって!あんまり嘘じゃない。
「なぜだ」
「なにが?」
「おまえに良いことない」
あったりしちゃうわけなんだなそれが。でもそれを正直に言う気はアメーバの涙程もない。ないったらない。生きていくために隠し事は必要なのさ。だから私はにっこりと天使の微笑みを浮かべて言った。
「いたいけな少年を放って置く訳にはいかないでしょ?善意だよ善意!」
嘘つけと目が口ほどにものを言っている。だがしかし私はあえて触れずにちびの頭に手を置いた。
「人の善意は素直に受けとるものだよ、少年」
そう言うと目を伏せて黙りこむちびっこ。一応は納得したってところかな?
ふっふっふっ。まだまだ甘いなちびめ。
「そういえば」
その言葉と共にちびの視線がギラリと上がり、頭に乗せていた手を払いのけられた。ん?私睨まれてる?
「おまえ、寝るとき何しやがった」
おおー忘れてなかったか。人にされたことは簡単には忘れちゃいかんよね、うん。特に危害を加えられた系は。
「何やったんだよ」
でも私相手に限っては忘れろ!全身全霊で忘れろ!