飼い主と非常食 | ナノ
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「おい」
「年上に、おい、はないよねえ」

年上っていうか、飼い主にって心の中で思っているというのは黙っておくことにしよう。食べるまで。仕方ないので軽く頬っぺたをつねるだけで許してやった。私は寛大なので。

「で、なに」

手を放して聞いてみる。そこそこ痛そう。心なしか赤くなってる気もする。ごめんねと口には出さずに特殊な電波で謝っておいた。伝わるといいね。
ちびっこが頬に手をあてながら口を開く。

「ここはどの壁の中だよ」

え、壁ってなんだ。どの壁って、壁に種類ってあんのか。建築家の息子ですか。
ん?壁…リヴァイ…なんか聞いたことあるような。そんな漫画なかったかなあ。今人気なやつ。野球チームみたいな名前の。うーん。まあどうでもいいか。

「えーと、忘れた」
「はあ?」

あ、忘れちゃいけない系なやつだったっぽい。適当に答えすぎた。もうちょっと丁寧に会話して差し上げようと思う。私は寛大なので。

「本当のことを言うと、ここは多分お前が全く知らない場所で、お前の常識は通用しない可能性が大変に高い」
「……」

「そんでもって、心優しい寛大な私が、ちびっこを保護してやろうと思う」
「ちびっこじゃない」

とりあえず突っ込むのはそこなのね。うん、カワイイカワイイ。ちびっこらしくて。





美味しそうな血の匂いはするのに身がない歩く飯テロなちびをシャワーに放り込んで、一度扉を閉めてから思い直してシャワーの使い方を教えて差し上げた。今日の私の寛大さは、スタンディングオベーションを送られるレベルだと思う。本当に。なんの気まぐれだ。

…そうだ、調べ物しようとしてたんだよね。なんて調べたら出てくるかなあ。リヴァイでググればなんか分かるかな。

「兵士長…?」

え、なに、進撃の巨人って漫画は実話を基にしたノンフィクションなの?それにしてもわたしの家で今シャワー浴びてるリヴァイはちびっこなのですが。わざわざショタ時代。わたしに需要はねえよ。多分。
進撃の巨人ってのは過去に実際に起きてた出来事で、あいつはタイムスリップしてきたのか?それともあのチビはこの漫画の大ファンでなりきりすぎてる?それにしても、そんな普通の子なら帰る家くらいあるだろう。はたまた、二次元から飛び出てきた、なんて。そんなまさか。いやでも、どちらにせよ食べてもいいんじゃね。いや、過去の人間を食べたらまずいかな。家なき子なら食ってもいいよね。二次元は…、考えるの面倒だな。お腹が空いたら食べればいいかな。獣みたいに。

なんと、細かい個人情報まで書いてある。さすがインターネット。どうやら、あのちびっこは大人になっても私よりちびらしい。笑える。

人類最強、ね。

そうやってストーカー並みにパーソナルデータを取得していたわたしは、ちびっこがお風呂から出る気配を感知した。当たり前だが替えの服なんてものはないので適当に私のTシャツを渡しに行く。一部のお姉様方に需要がありそうな格好にはなるが、あのサイズの人間にそっちの意味で食っちまいたいとかいう感情はさすがに抱かない。ショタコンじゃないので。

「おい、ちび、これ着といて」
「ちびじゃねえ」

当たり前だが、ちびからのそんな文句は聞こえないふりをした。