飼い主と非常食 | ナノ
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「なんだこれ」

バイトからの帰り。アパートの部屋の前に変な物体を発見した。

「ちびっこ?」

「ちびじゃない」

まさか返事があるとは。でもどうみたってちびっこじゃないか。小学校低学年くらい?いつのまにか生んだ私の子供、なわけもなく。あれか、捨て子か迷子?このご時世に捨て子なんてそんな。…珍しくもないのか。

「ここでなにやってるのかな?」

「しらん。きづいたらここにいた」

なるほど、きづいたらここにいたのか。世の中そんなこともあるよね。いやねえよ。

「君、親はどしたの?」
「…さあ」

含みのある返事だね。別にいいけど。

「わからんかー。じゃあ戸籍ある?」
「こせき?」

うーん。まあ、このくらいの子どもに戸籍を聞いたって分かりはしないか。戸籍がないなら好都合、なんて思っているわけだけども。

「…ここはどこだ?」

なんと記憶喪失の典型的みたいなことを口走り始めた。ここはどこ?私は誰?いや、ていうかお前誰?

「君、名前は?」
「…リヴァイ」

え。り、リヴァイ?どこの国の人だよ。これが昨今流行りのキラキラネームだったら卒倒する。理宇亜威みたいな。馬鹿かよ。
まあでも名前も忘れた記憶喪失でないようなので安心した。

「おい、で、ここどこだよ」

あ、忘れてた忘れてたごめんごめん。ここはどこ?って何気に難しい質問だよね。まあ今そんなことはどうでもいいんだけど。

「うーん、日本?」
「……」

そこで理解に苦しむという顔をされるとこっちが理解に苦しむ。私としては、日本なことくらいは分かってるわ馬鹿じゃねえの、くらいの返事を期待していた。馬鹿って言われたいみたいな言い回しだがそういうわけではない。

「ところでお前、人間?」

は?っていう顔された。

「は?」

と思ったらホントに言われちまった。真面目に聞いてるんだけどな。一番重要な質問を。お前からする、不自然な他人の血の匂い。

「君は、人間ですかね?」
「……うん」

そうか人間か。痩せてるから美味しくなさそう。訳ありなら食っちまおうかと思って会話をしていたけれど、腹の足しになるかどうか。
頭の中に、「飼いビト」なんて悪趣味な言葉が浮かんだ。特に意味はないし、拷問する趣味は別にないけど。
まあでも、典型的に、太らせて食べるっていうのもありなんじゃないかな?

「うん、ウチにおいで」

問答無用。わたしはちびっこを抱きあげると家の中に連れ込んだ。自他共に認めるであろうガッツリ誘拐。目を白黒させながらもとりあえずという感じでちびっこに聞かれた。

「おまえ、なまえは?」

年上をお前呼ばわりとは。これは躾する必要があるようです。なんて。まあ今は答えてやろうじゃないか。年上の余裕というやつで。

「笹木みずほだよ、ちびっこ」
「ちびっこじゃねえ」

お前なんかちびっこで十分だね。

だって、家畜のこと名前で呼ぶと愛着が湧いて食べられなくなるっていうでしょ?