飼い主と非常食 | ナノ
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あれから数日後。私の衝撃発言の次は、ちびがとんでもないことを口にした。

「今日、俺のたんじょうびだ」
「はあ?」

えっと、タンジョウビってなんだっけ。誕生日か。誕生日?

「もっと早く言えよ!」
「なんで」
「なんでも!」

てか今日クリスマスじゃん。ケーキ。買えっかな。

***

バイト帰り。お父さん達に混じってケーキ屋に並んだ。微妙に大変な日に生まれやがって。明日の方がケーキ安いらしいのに。買ったことないけど。まず、クリスマスというイベントにやや参戦すること自体初めてだし。
つーかあいつ何歳だよ。蝋燭どうしよう。まあいっか。適当で。
夕食は、コンビニ飯からグレードアップして、ケンタッキーにしてやろう。きっとそっちの方が旨いんだろう。

***

「はっぴばーすでーとぅーゆー」
「なんだそれ」

ケンタッキーを(ちびが)食べ終え、ケーキを出した。蝋燭をあるだけ挿したら、すごいことになったけど気にしない。

「はっぴばーすでーでぃあーリヴァイー」
「だからなんだそれ」

蝋燭にチャッカマンで火を点けると、部屋の電気を消した。なんだなんだと警戒するちびを無視して、バースデーソングを歌う。

「ちびも一緒に!」
「は?」
「はっぴばーすでーとぅーゆー!」
「……」

なんの反応もしてくれなかった。

「ノリ悪いなー」
「…ノリの問題じゃないだろ」

というか、蝋燭点いたままなんだよね。ここにきて文化の違いが!文化以上の違いがあることは認める。

「ローソク、吹き消すの!」
「……、ー」

今度は何の文句を言わずに消してくれた。きっとちびはこの行為の意味を解ってないことだろう。安心しろ、私も知らない。なんでケーキに蝋燭点けて消すの?魔除け?
まあ意味なんか知らないこと世の中に一杯あるよねと適当に自分を納得させると、部屋の電気をつけに行った。
また、いつものところに座る。ケーキは一切れしかないので、切り分ける必要もない。そのままちびの方へ押しやった。

「そういえば、」

ケーキの上の苺を、最初に食べるのかと思いきや皿に置いたちびが話し出した。

「ぐーるって、にんげんの食べ物食えないのか?」

かなり今更な質問だな。厳密に言えば不味いだけで食べられないわけじゃないけど。そだよーと、肯定しようとしたところでふと気がづいた。
私、前にこいつの手料理食べてるじゃん。うわ。なんて答えよう。やっぱ食べなきゃ良かったと思ったけどあの時はそういう状況じゃなかったんだよなそういえば。

「食えないのか」
「……」

今度は私が無言を貫く。無言は肯定っていう言葉、ちびは知らないよねだって文化が違うもの!つーか知らないでくれ。頼むから。

「じゃあなんで、俺がつくったの食べたんだよ」

貴様、気づいてはいけないことに気がついたな。うわあ。12月なのに冷や汗が。

話を、変えよう。

「…ちび、プレゼントだ。受けとりたまえ」

そう言うと、ちびがやや不機嫌そうな顔になった。プレゼントと言われて嬉しそうな顔をしないとは。ガキ失格だな。私が話を変えたことが原因?そんなん関係ねえ。もっと単純であれ。
大人げなくムカついたので、プレゼントをちびに向かってぶん投げようと思った。けれど、思い直してちびの首に掛ける。物が物なので。

「なんだよこれ」

今日、そんな感じの質問多くないか。

「ネックレス型ナイフ」

ちびの首もとに手を伸ばすと、カチャッと操作して刃を出してやった。パッと見は普通のお洒落なネックレスなのに、ワンタッチでナイフが出てくる優れものだ。私がたまに使ってたやつ。赫子出すと、服破けるんだもん。まあネックレスなのでサイズはかなり小さいが、頑張れば殺人も可能。たぶん。

「人間の殺し方を教えてあげよう!」

ドン引いた目で見られた気がしないでもない。