飼い主と非常食 | ナノ
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非常食って、非常のときに食べないといけないんだよね。私、お腹空いたからって非常食をつまみ食いするような悪い子じゃありません。というわけで。

「ちびー出掛けてくるー」
「ちびじゃねえ」

この子のちびじゃない発言はあれか、返事なの?ハイの代わりなのか。じゃあ私がちびって呼ばなかったらなんて答えるんだ。うーん、わりと普通な返事が返ってきそうだ。それじゃ面白味がないよね。

「いい子でお留守番しててねー。決して着いてきてはいけませぬよう」
「…わかった」

ほら、やっぱり面白味がない。

***

狙いを定めてズッキューン。特に意味はない。
やれやれ、お腹が空くとどれもおいしそうに見えるからいかんね。遺憾です。食い散らかす気はないのだ。後片付けはきちんとする派なんで。腹減った。誰でもいいから食べたいなー。
路地に人が来ました。周りに人影は無し。あれでいいや。お気に入りのマスク頭から被って、いただきます。

アラサーぐらいの男の背後から襲いかかる影。まるで鬼のような人間離れした目。体から生える異形な武器。男はあっさり切り裂かれ、影に喰われていく。男の存在がこの世から消えていく。骨も残らないだろう。影は、果たして何者なのか。いや、人間なのだろうか。

まあ、私だけどね!

「や…やめろ…」

男がうめく。私だって。自殺死体にも限りがあるし、お前を生かしておくと、私が殺されるんだ。人間にとって害虫ですから。

「……、」

振り返る。男は絶命したのに。ヒトの気配。

あれ。

「リ、ヴァイ…?」

え。まさか。

「…みずほ」

なんできたの。なんでみたの。

なんで。なんで言うこときかなかっなの。どうして、そのまま家にいなかったの。

殺さないといけなく、なっちゃったじゃん。