か、完食してやったぜ…!
どうだと言いたい気分だ。今までの努力が無駄になるから言えないけど。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま」
私の教育の賜物でちびはちゃんと挨拶のできるちびになっている。いかなる時も感謝を忘れてはいけませんってね!
「じゃ、後片付けはやっとくからお風呂入ってきな」
私がそう言うと、素直に頷いて風呂に入る準備をしにいった。
耐えろ私。無表情を保て。
そうして、お風呂場のドアが閉まる音が聞こえたと同時にトイレへ駆け込む。
吐きそう。
床に座り込んだ瞬間、私が一回だけ料理をしたときのちびの顔がふと思い浮かんだ。
―はじめて、じぶんのための食い物だった。
無理して全部食べなくていいと私が言っても、リヴァイは全部食ってたな、そういえば。
「ああもう!」
トイレのドアを開けるとコップに水道から水を注いだ。飲み干す。それを三回くらい。ついでに飲める唯一のコーヒーを、インスタントで淹れて飲み干す。分量が雑だったので美味しくない。最後の一杯だけはちゃんと淹れて、だけど一息で飲んだ。
やれやれ。口の端からコーヒーが少しこぼれたから、手で乱暴に拭う。なにやってんだよ私。アホか。こんな風にはならないと、昔から決めてたっていうのに。
ガタン。
ちびが風呂から出てきたみたいだ。結局後片付けやってないし。もうすぐこっちに来るのは分かっているけど、立ち上がる気力がない。
「は?」
キッチンにへたりこんでいる私を見て、ちびが唖然とした。そりゃそうだ。
「なにやってんだ」
覗きこんでくる。ちびはちっちゃいから、座っている私と立っているちびで目線があまり変わらない。それでも、ちょっとだけ見上げる視線は新鮮だった。
「コーヒーで舌、火傷した…」
心配そうな感じだった顔が、一気にはあ?という顔に変わった。
「あほ」
そう罵りつつもコップに水と氷をいれてくれているリヴァイは、多分優しい。