飼い主と非常食 | ナノ
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これほどうれしくない頂き物は久しぶりだ。愛想笑いを浮かべつつ、内心では悪態をつく。激しくいらないです。
なんでも、お隣さんの実家から野菜が送られてきたらしく。それをお裾分けだそうで。
思わずため息を吐くと、ソファでテレビを見ていたちびっこが首をかしげた。

「どうした」
「いやー食材を貰っちゃってねー。どうしようかなあって」

ふーんと、興味があるんだかないんだか分からない返事。酷いなあ。私は真剣に悩んでるというのに。そんな子に育てた覚えはありません!ちなみに、どんな子に育てた覚えもありませぬ。

「お前りょうりできないもんな」
「うるせえ」

余計なお世話だ。

***

学校の帰り。アパートに近づくにつれて自分の部屋から変な臭いが漂ってきた。なんか、お隣さんの夕飯の臭いみたいな。いやそんなまさか。でも、嗅覚は人並みというか人間以上なわけで。つまり。

「た、ただいまー」

つい、恐る恐る家のドアを開ける。立て付けの悪い扉は、やかましい音を立てた。ここまでは、いつも通り。しかし、普段なら聞こえてくるおかえりなさいの声が聞こえない。それはまさか何か作業に没頭しているとかそういうことなんですか。

「ああ、おかえりなさい」

ようやく、ちびの声がキッチンから聞こえた。…キッチンから、聞こえた。キッチンから…。

「…なにしてんの」

分かってはいるんだけど現実を受け止めたくなくて念のため聞いてみた。予想よ外れろ。

「りょうり」

…やっぱり?

「ちび、お前料理できたの?」
「パソコン」

そういえば、操作の仕方簡単に教えたもんね…。無駄に器用だねお前。私にとっては絶望的だが。

「もうすぐできる」

はい、手でも洗ってきます…。

***

さっき、ちびって言ってもなんも言ってこなかったな、こいつ。それってもしかしてかなり浮かれてたりします…?ちびの向かいに座っていることはいつもと同じだが、私の前に食べ物があることがいつもとは違う。目の前に並べられた料理は、サラダと炒め物という野菜だけでなおかつ簡単なメニューだが、見た目は悪くないと思う、多分。

「い、いただきまーす」

見てる見てる見てる。さりげなさなんて微塵も感じさせずにガン見してくる。顔、引きつってないかな…。
意を決して一口、口にいれた。

手料理はまずいんだよ特に手の込んだやつは!味が重なって重なって襲ってくるしキャベツなんて水を吸ったトイレットペーパーを何層にも重ねたみたいだし人参は土をボンドで固めたみたいだしトマトの液体は排水口の粘ついた水みたいだし小さい種が粒々と虫のように広がってくるし。噛まずに飲み込む。

「おいしいよ、ちび」

手料理は久しぶりだけど、慣れてるから。作った笑顔は完璧!な筈。

「…ちびじゃない」

こいつ、もしかして照れてる?
なんだか急に頭わ撫でたくなって、手を伸ばして触れたら即座に払いのけられた。