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布団 2
 
また寝てしまっていたらしい。警戒心のなさすぎる自分に嫌気がさしました。どうやら、温かい布団の中だった。

あたたかいふとん?
ふとんはいやだなあ。
だってあなたの子どもじゃない。俺は、違う。ふとんはいやだなあ。追いかけてくる。違う来ないで。何言ってるの。意味わからないよ。ははおやは怖いねえ。あたたかいふとん。おまんじゅうは美味でした。あの白いやつ。白いのは俺。化け物も多分俺。あたたかいふとん。ケダモノかなあ。ケダモノもケモノも漢字で書けば一緒っぽい。赤いのはおとうさん。ははおやはこどもは。違う来るな。足をもっと速く速く速く動け動け止まるな。カラス。不味い。喰える?そうだおかあさんを守らなきゃ。ははおやたちの布団固い固い冷たい。冷たかったよ?多分。じゃあなんで、俺からすれば温かかった。だから。俺は。
「佐吉じゃないっ!」

自分の寝言で目が覚めるみたいに、自分の必要以上の大声で意識が覚醒した。さっきまでいたような気がする布団からは離れた部屋の隅っこでうずくまっている。なにやってんだろう。
そしてどうやら俺の声帯の無駄遣いはここの部屋には居ない誰かにも聞こえたらしく、まああの人しか恐らく居ない訳だが、こっちに向かってくる足音が聞こえた。もう襖を開けて入ってくるだろう。

「どうかしました?」
ああやっぱりあの人だった。部屋の隅にいる俺に対してしゃがんで目線を合わせると、小首を傾げて聞く。無駄にその女子力高めな動作が似合うな。いやもしかしたら無駄でないのかもしれない、けど。

「あなたはサキチというのですか?」
その疑問は割りと簡単に答えることが出来る。ただし喉が生きるうえで二つ目に重要である声を出す仕事を放棄したので首を振ることで意思表示をした。ノーである。
「では、あなたの名前を教えてもらえませんか?」

その質問は難儀な。

「屍を喰らう鬼。それかただ単に鬼。化け物。ケダモノ。もしくはなんでもない」
久々に長文を話したため無駄に疲れた。こんなことを聞いてなんになるの?
「いっぱい名前があるんですねえ」
全く一つも無いともいうけど。

「では私がもう一つ、名前を付け加えても構いませんか」

こうして、俺に銀時という名前がついた。たった一つの一つ目の大事な名前だった。




 

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