「君はなんでつまらないのかな」
さあ。分からないな。空は光を必死に押し止めようとしている雲が広がっていて、おかげで辺りは暗かった。日向も日陰もないから影おくりも影踏みも日向ぼっこもできそうにない。全部やったことないけど。
「私はなんでつまらないのかな」
それこそ、本当に、知るかよ。だいたいそれは俺に向けられた質問なのだろうか。もしかすると自問自答だったり。だとしたら俺恥ずかしい人なんじゃないだろうか。
「それ、誰に言ってんの」
「丸井」
あ、そう。俺に言ってたの。良かった。嘘。別に良くもない。かもしれない。別の問題が発生する気がする。
「つまりお前はなにが言いたいの」
「何が言いたいのかと言うと、」おう。聞いてやるよ。
「何が言いたいのかと言うと私と君が折角一緒に居るというのに私が退屈に感じているのは何故だろうということが言いたい」
それってさ、つまりさ、
「構ってくれってこと?」
そう問いかけると苗字はさっきまでこっちをガン見していたというのに急に目を逸らした。むしろ体ごと向こうを向いてしまった。そしてぼそっと呟く。
「君と一緒に居るだけで幸せだって言って欲しかった?」
会話のキャッチボールが成立しなかったのはいつものこと、というわけでもないしむしろボールをぽいと何処かへ放り投げてしまうのはいつも俺の方なわけだが。そんなことは気にしない。
「なにそれ気持ちわりぃ」
「あっそ」
そう言って苗字は目を輝かせた。
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