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その銀色の光を見たとき、ココロが震えた。折られても折られても消えない光。まるで、目障りな太陽のような。
でも、まだ足りない、もっと、もっと強くなって。そして、俺と、殺し合いをしてね?待ってる、から。

***

「今迄よく働いてくれた神威。だがな、貴様等夜兎の血は危険すぎる。組織においてー」

とかなんとか。話長くて聞いてらんないよね。俺の背中、めっちゃ矢刺さってるし。あはは、やばくね?まいったまいった。アホ提督に一本取られるとは。アホのわりに意外とやるじゃん?予想外予想外。

「バカはてめーの代わりに俺が殺っといてやらァ。だから安心して死んでいきな」

タカスギシンスケがなんか言ってるけど。ゼッタイゼツメイってやつ?あはは、死ぬかも。笑える。
…願ったり叶ったりじゃないか。あはは。

でも足りない。まだ足りない。足りない。赤が。もっと。もっと。違う。違くない…うそだよ。


***


生きてるし。牢屋の中、手錠されてる。
…生きてるし。わざわざ手当なんかしちゃってさあ。そのままにしてくれたら、死んだかもしれないのに。万全の状態なんかにされたら、死ぬ訳なくない?頭悪いんじゃないの?やっぱりバカはバカだ。あ、バカじゃなくてアホだっけ?どうでもいいけど。
でも俺、ショケイされるんだってさ。3日後に。さあて、俺を、ちゃんとショケイできるかな?すっきりさっぱり、命を刈り取ってくれよ!頼むから殺してくれなんて、あんなアホには死んでも言わないけど!

***

抵抗する気は無かった。そりゃあそうだ、死にたいんだから。柱に固定されて、あ、案外死ねるんじゃない?とか思ってみたりもしたさ。

「こんなオンボロ船に乗り合わせちまったのが運の尽きだったな、お互い」
「…アンタと俺の行く先が一緒だって?」
「さあな、少なくとも観光目的じゃねえのは一緒だ」
「観光だよ、地獄行きのね」
「なるほど、違いない」

そして、すぱあんと、綺麗に斬れた。手錠だけね!
あーあ。そんなご丁寧な斬り方しちゃって。だから言ってるじゃない。話聞いてた?あのね、俺は、地獄に行きたいんだよ。そう言ってんじゃん。これ以上、血なんか浴びたくないの。
なんて。たった今何匹か殺したけど。説得力ないね!カラダはココロを裏切る。それとも、ココロがカラダを裏切ったのかな?じゃあさあ、頼むから、神威のココロが帰ってきてくれないか?俺には…無理だよ。
ココロがカラダに従わないのなら、カラダにココロを従わせればいいのかもしれない。
どうせ俺のやることは変わらない。殺すだけ。誰かが、俺を殺すまで。

さよなら!アホ提督!

そうだなあ…侍の星に、強いヤツがいた。俺を殺してくれそうな、強いヤツが。

***

「やってるやってる、すごいね忍って奴等は。侍以外にもあんな強い奴等がいたなんて、オラワクワクすっぞ」
「ワクワクしないで仲間だからね、また変な気起こすなよ団長」

酷いなあ。ヒトをケダモノみたいに。俺だってリセイもチセイも十二分に持ち合わせてるってのに。ただ体が従ってないだけでさ!

「姫様〜みてくだせェ。あれがホルモン、あれがレバー、…さて。次はミノかハツか」

そこに現れた、お姫サマを守る騎士?まあ、そんな大層なもんじゃないよね。あんなもんはただの。

ぴょんと飛び降りてみた。あはは、飛び降り自殺みたいな?死なないけどねえ。

「あ、ごめーん。傘開いたら飛べると思ったけどやっぱ無理だった」
「オイ、どこのチンピラシータだてめえ」
「そんな顔で見ないでよ、アンタの同類さ」

そうやって、カラダが血を浴びたがってる。
ただの、人殺しだ。俺も、お前もね。

「俺は強者を探してた。アンタみたいな、人殺しを。安心しなよ、悪党しか斬れないってんなら、俺はとびきりの悪党だから」

そうやって、また殺すんだ。なあ、アンタが騎士なら、お姫サマを殺したら本気になってくれるだろう?

「なら、もっとよく狙いな。次はてめェのどてっ腹に穴が開くぜ。宇宙の悪党さんとやら、…地球のおまわり、舐めんな」

俺は、笑った。我ながら綺麗な笑みで。わかる?これは、期待だよ。誰も気づかないけど、俺はいつだって期待してる。だから、頼む、頼むよ。

「おまわりさんこそ、目ェ見開いて、よーく狙ってね?」

それから、俺は、ただただカラダが動くのを眺めていた。すごい、接戦だね。いい感じ。応援してるからさあ、頑張ってね、おまわりサン。
痛みが俺を貫いて、弾けて消えた。何も感じない。うそだ。ちゃんと痛い。腕がもげても、止まらない。あれ?もげたのは相手の腕か。なんだ、やっぱり分かってないんじゃないか。ねえ、神威。消えたんならさあ、どうしてお前はまだ殺してる?足りない。足りない。血が足りない。足りないのはお前だろ?俺じゃない。そうだろ。俺は別に血を浴びたくなんかない。神威だろ。なあ、なら、お前がやればいいだろう。全部。俺じゃない。足りない。渇く。渇いて渇いて、求め続ける。結局のところ、目的は違えど人殺しを探してるのは俺も神威も一緒なんだ。俺は死ぬため。神威は戦うため。帰ってきて。俺を殺して。お前は強いから。でも、分かるよ。分かったよ。お前の心は、弱かったんだよね。体とアンバランスなくらい、弱かったんだよね。だから、逃げたんだ。こんな臆病な俺を残して。分かるよ。別人だよ、俺とお前は。足りない。足りないのは、お前だ。ちゃんと、向き合って。俺は、だめだよ。血が、足りないのは、渇いてるのは、お前だ。寂しいのは、お前だろ、神威。

どかあんと、爆発。

うわ、なんか刺さってるし。刺さってるけど死んでないし。そもそも大して痛くもないし。

「おーい団長、だから勝手なマネやめろつったろ」
「もろい船だな、折角いいところだったのに」
「ああ、いいところだった。あともうちょっとズレてたらハタ迷惑なすっとこどっこいともお別れだったんだが」
「…そうだね。相変わらずの悪運だよね」
「なんだって?」
「別に。あともうスグで片付いたのになって」

あれ。忍が将軍殺しちゃったんだって〜。すごーい。どうでもいいけど。折角見つけた人殺し、ここで逃すのは惜しいなあ。でも怪我しちゃってるから、もう無理かな?脆いなあ。背中に刺さってたパイプを引っこ抜いておまわりさんに投げると、同時に日本刀が返ってきた。

「戦う理由なんざ、てめェで決める。アンタもそうだろう、悪党」
「そうだネ。ねえ、また会おうね、おまわりさん。今度はさあ、もっと強くなって」
「ああ?言われなくとも」
「それで…俺を、殺しに来てよ」

向こうの船で、男が怪訝な顔をしたのが見えた。
ああ、ようやく動いた、俺の口。ちゃあんと、望みを伝えられたね。でも、それだけじゃ意味がないんだ。
待ってるから。ねえ。お願いだよ。

「頼むから、俺を殺してくれ」

お前なら、きっと、殺せるよ。
俺のことも、可哀想な神威のことも。


***
まことさまリクエスト「神威成り代わりの続き」
リクエストありがとうございました!





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