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案の定、死ぬのか。

助けるつもりはなかった。あいつだって、自分のしてきたことくらい分かっているはずだ。それが死に値するようなものであるということも。それでも止まらないんなんて。賢いくせに馬鹿なあいつ。

「それでも、好きだったんだよなあ」

好きなひとが、目の前で殺されようとしていた。彼を倒すのは、英雄。あいつを殺すことによって真の英雄になるのだろう。生き残った男の子。あいつも放っておけば良かったのに。誰よりも死を恐れているから、自分を殺すかもしれない小さな赤ん坊が怖くてしかたなかったのだ。臆病な、闇の帝王。
そもそも、闇の帝王とか例のあの人とか、ヴォルデモート卿なんて呼ばれるような大層な人間じゃないのだ、あいつは。自分が貶められることを人一倍怖がる癖に、それを隠す演技力も人一倍あって。あいつの本心なんて分からないけど、あいつだって自分の本心なんて分からなくなっていたんじゃないだろうか。

「トム・リドル…」

杖を、武器を失った。そのまま、命が尽き果てていく。あいつが死ぬこと。今となってはきっとこれが最善だ。でも、泣くくらい許されるだろう?私にとっては、全然最善じゃない。死んでほしくなかった。ちゃんと、向き合えばよかった。伝えればよかった。世界の最善なんかどうでもいいって、自分勝手になればよかった。

愛してるって、言えばよかった。

ふらふらと、あいつの成れの果てに近づいていく。もう、周りからどう見られるかなんてどうでもよくなってきた。悪役の死体に近づいていく女。殺されるかもしれない。それでもいい。もういいよ。
がくんと、膝をついた。拭っても拭っても、涙が溢れて止まらない。良い人じゃなかったから、悪い人だったから、もしかしたらあいつの死を悲しんでいるのは私だけかもしれない。私だけでいい。私だけは、あなたが死んでしまってとてもかなしい。
そっと、あいつの残骸に口づけて呟く。

「あいしてる」

ずっと。いつまでも。

私は懐からナイフを取り出すと、自らの命を絶った。今まで信じていなかった、あの世の存在を願いながら。





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