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巨大な蛇、バジリスクの鳴き声がする。こいつの言っていることを理解出来るのは恐らくこの魔法学校でも一人だろう。
そのトム・リドルはたった今、人を関節的に殺した。

僕が命令して殺ったのだから関節的にとも言えないか。

そう思うリドルの目は真っ赤に爛々と、しかし暗く輝いていた。
現場は、女子トイレ。被害者、ホグワーツの女子生徒。殺害方法、蛇で一睨み。

あっけない。脆い。弱い。命なんて。こんなものか、と思った。かすかに絶望した。そして絶望した自分にも驚く。一体何を期待していたんだ。

立ち上がって、その場を後にしようとしたそのときとき、
――カタ
人の気配を感じた。

「誰だ」
とっさに杖を構え、辺りを警戒する。どうやら扉の方だ。見られたか。迂闊だった。死体をもう一つ増やすべきだろうか。
扉の隙間から2つの目が覗いている。
とにかく、浮遊呪文でそいつを無理矢理中に引きずり込んだ。どうやら女だ。ここは女子トイレなので当たり前だが。しかし、こんなトイレを使用すり奴がいたのか。こんな、汚いトイレを。

蛇をけしかけようと思ったとき、「待って!」と叫ぶ女。待つかよ、と思い一瞬止まった動作を再開、させられなかった。

なんか突進してきた。唖然としてたら突き飛ばされた。せめて魔法を使おうという思考はないのだろうか。

逃がしはしないし、命乞いも聞くつもりもない。

しかしそいつはいきなり立ち上がると、堂々と言い放った。

「私、殺されるなら決めてたことがあるから実行させてもらう!」

ぽかん、と眺めているといきなりネクタイを外したかと思うとローブを脱ぎ、シャツのボタンを一つ一つ開け始めた。

「何、してるんだ」

思考回路というものはあまりに突拍子のないことをやられると逆に冷静になるらしく、まともな質問をすることができた。

「私、殺されるときは全裸って決めてたんだよね!」

前言撤回、やっぱり突拍子もなさすぎるとショートする。




(とりあえず、慌てて止めた。ネクタイが自分と同じ色だった)
(殺意が、萎えた)





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