×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


さて。私は考える。今まで考えたことのなかった問題だ。つまり、全く知らない人間を食べるか、ある程度親しみを感じた人間を食べるのか。ということ。
死んでいるのは皆兵士だ。おそらく味に大差はない。だから、感情で選ばないといけない。しかも、死体はここに置いて行くのだ。巨人が死体を食べるのかどうかは知らないが、自然に呑み込まれることは確かだ。死者が、私の胃の中か巨人の胃の中か微生物の胃の中か(微生物に胃があるのかは知らないけど)、どこで消化されることを望んでいるのかは分からない。それ故に、これは私の問題だと思う。
死体をどうするのかというのは生者の選択であり、感情によって決められる。死者の遺志があったとしても、それに従うか従わないかは生者の決めることだ。喰種でも人でもその他の動物でも、死体とは生きてるもののためにあるものだと思う。葬いとは、死者のためではない。生者のために行われるのだ。
地面を歩いて、さっきは迂回して通らなかったところまで戻る。グンタ・シュルツは、うなじを切られ死んでいた。明らかに、巨人の仕業ではない。この切り口は、刃物で切った跡だ。彼は、人間に…少なくとも、刃物を扱えるような生物に殺されたのだ。食べるためでもなく、ただ殺すために。
世界にとって、何に意味があって何に意味がないのか知らないけれど、食べるというのは、私にとって意味があることだった。
腕を食べる。服に血がつかないよう、気をつけて食べた。血だらけだとあとで目立つから。
ああ、呆れるほどおいしいなあ。人間の死体を食べればおいしいし、食べないと死ぬし、例えそれが人間にとって悪だったとしても、人間にとっての善悪を押し付けられる謂れはないし。そもそも、自分たちは生き物を殺すくせに、自分たちだけは食べられたくないというのは、傲慢じゃないのか?それは私たちにも言えることかもしれないが。喰種の肉を食べるのは共食いの同種くらいしかいないんだからしょうがないだろう。
内臓を、食べる。美味しいものを食べれば、幸せになれる。だから、私はあなたから幸せをもらったよ。ありがとう。
死体は、生きてるものの栄養になればいいと思う。だから、燃やしてしまうのは、私の価値観では、間違ってると思う。私こそが正義だとか、そんなことを言うつもりはないけど、埋めるのはわかるけど、燃やすのは、間違ってると、そう思う。


prev next

back