私がちびに人間じゃないと話してから数日後。
「ちびが起きない」
なにゆえ。ちびは相変わらずソファーで寝ている。毛布は渡してるし文句ないだろと思ったんだけど。
「おーい、ちびー。起きろよー」
確かにこいつは朝が弱い。駄菓子菓子、じゃなくてだがしかし、今は昼過ぎ。何故なら私が今起きたから。休日くらいゆっくり寝かせろ。
と、まあこんな感じで寝汚ない私と、朝は弱いものの午前中にはだいたい目覚めるちびだと、普段の休日はちびの方が起きるのが早い。今日を例外として。
ひょってして具合でも悪いのだろうかと、当たってほしくない予想をしてちびの額に手を伸ばすと、当たってほしくない予想が残念ながら当たっていたようだった。熱出てやがる。
「め、めんどくせー!」
***
人間の風邪の治療法なんか知らんと、ちびを背負うと家を出た。一応あったかい格好はさせたし!
こいつって、戸籍とかないんだけど。病院行けんの?というかまず私が病院行ったことないから仕組み分からない。だって病院行って万が一採血でもされたらジ・エンド。なわけだし。まず人間の滋養ある食べ物とか分からんし。
という思考に至ったため知り合いの元へ向かっている。あそこならなんとかしてくれるだろ、たぶん。本当はあんまり頼りたくなかったんだけど。だってなんか胡散臭いじゃん。まったく全部ちびのせいだ。食べてやろうかと思ったけどこんな風邪っぴき食べたかないわ!むかつく!
「いらっしゃい…おや」
あんていく。ここなら人間の食べ物もあんだろ。
***
目がさめた。ここはどこだ?
ふだんのソファーじゃねえ。それでもやっぱりソファーだが。体が重い。暑いような、寒いような気がする。
「あー、起きた?」
向かい側にあるソファーに名前がいた。ここはどこだ、と言おうとしてのどがかすれて声が出ないことに気がつく。
「これを飲みなさい」
…だれだこのオッサン。ちらりとしょうめんを見ると、いいからさっさと飲めという顔をされたのでコップをうけとる。少しにごっていて、あまい味がついたえき体だった。なんだこれ。
「具合はどうだい?」
「ふつう」
「嘘つけ、まだ顔が赤いだろーが」
オッサンのしつもんに答えたら、名前にうそつき呼ばわりされた。顔が赤いって言われたって、じぶんじゃわからねえよそんなもん。
「これ食ってろ」
「なんだこれ」
「お粥」
「なんだそれ」
「黙って食え」
一口食べた。あつい。したやけどしたかもしれない。だが、食べてわかったことがある。名前のつくったやつじゃねえな、これ。
「で、さっきの続き、聞かせてもらおうか」
とつぜん話しはじめたから、おれかと思ったけどちがうらしい。
「げ」
「なんでこの子を拾ったんだい?」
「…ひじょーしょくになると思ったからだよ、ひじょーしょく」
「そうかな。私は今はそれだけに見えないけどね」
そう言ってこっちを見るオッサン。こっち見んな。
「本人の前で非常食だと宣言してるようだけど、君はどうして逃げないのかな」
「……俺?」
「ああ、君だ」
なんでにげねえんだと言われても。
「だって、どうせにげてもむだだろーが」
「無駄?」
「にげたって、おいつかれるだろ」
俺とオッサンが話しているあいだ、名前はふきげんそうにそっぽを向いていた。なんだこいつ。
あとオッサン、
「わらってんじゃねえよ」
「ああ、悪いね」
「ふん」
むかつく。
「治るまでここにいて構わないよ。またなにかあったらおいで」
「そりゃどーも。ありがとうございますー」
「じゃあ私は店の方にいるから」
「へいへい」
みせ?ここみせだったのか。
「なんだあのジジイ」
「チッ。そーだよねー食えないオッサンだよねー」
「こどもの前でしたうちしてんじゃねえよ」
「うるせーなちびが。食べ終わったんなら寝ろよ!」
ちびじゃねえ。
しばふさまへ
遅くなってしまい申し訳ありません!
初リクエストと聞いて、慣れてないのにしていただけたのかと思うと嬉しかったです。
喰種キャラと遭遇とのことでしたが、店長だけですみません…。本当は四方さんとかも出そうとしたんですが力つきました。夢主の師匠は四方さんという設定で書いていたのですが、そっちの方が良かったですかね…。
リクエストありがとうございました!
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