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ただの柱から、部屋らしき場所に移されて数日たった頃だった。

この部屋らしき場所は、とにかくすることがない。道具が逃げ出さないように、壊れないようにするための場所であり人間の住み処ではないから当たり前なんだけど。だからって外に出たいわけでもなく。自発的に外に出るのならともかく、外に出されるということは殺してこい、という命令に直結するわけで。結果、刻々と俺の引きこもり精神は育てられている。将来ニートになったら絶対あいつらのせいだ。……将来、か。
我ながら、馬鹿だなあと思った。

「出ろ」

部屋の鍵と扉が開いて、最低限の指示が飛んでくる。それに大人しく従う俺は。この時は、まだ愚かという言葉を知らなかった。

***

今回の敵は、人間ではないらしかった。恐らく、天人。パッと見では人間だが、特に根拠もなくきっとこいつは人間ではないのだろうと勘が働いた。俺は自分の勘を割と信じているのだ。実際、この勘も当たっていたことを後から知ったのだが。

目の前の三つ編みが口を開く。

「おにーさん、人間?」

お前に聞かれたくねえよ。

「そんな色の地球人、初めて見たヨ」

それは、よく言われる。変な色だなって、自分でも思う。

「まあいいや。遊んでよ、白夜叉サン」

白夜叉と、そう呼ばれたことにちょっとだけ安堵した。ここにいる自分は、銀時じゃないと言われているような気がして。自分が銀時であることを否定してほしくはないのに、ここにいる自分を銀時と呼んでほしくもない。矛盾。ただの我が儘。
もっとも、銀時という名を知っている奴はここには居ないのだが。

遊んでよ、という言葉とは裏腹に明らかに殺す気だろお前、という蹴りが飛んできたので慌てて避ける。つもりが避けきれず足枷が砕け散った。危ね。もろに当たってたらやばかった。

「そんなのあったらつまんないもんネ」

わざと外したってか。つまり全く俺は避けられてなかったわけで。うわ。死にそう。

「本気出してよ、白夜叉サン」

どうでもいいけど、なんでこいつニコニコ笑ってやがるんだろう。ニコニコってか、ニヤニヤか。なにが楽しいんだろう。ついでに俺、今どんな顔してんだ。笑っていないことは確かだった。

かなり今更ながらに、刀を抜く。足を大きく開けるのは久しぶりだ。正直、こいつ相手に足枷と素手で勝てる気はしなかった。弱気というか、多分事実。…こういうのを弱気って言うのか。

回し蹴り。しゃがむ。足払い。跳ばれる。膝が目前に。ということが、ほぼ一瞬の内に起こって。気がつくと、色々と痛かった。勢いを殺すために後ろへ跳んだと言うべきか、蹴りに吹っ飛ばされたと言うべきか。さっき弱気だった分、微妙に強気になってみる。

すると突然、相手の殺気が消えた。

「やーめた」

なにゆえ。ありがたいけど。

「鎖に繋がれた獣なんて殺り甲斐がない」

…そーかよ。

「次はケダモノでいてネ。銀髪のおにーさん」

こいつは、もう俺のことを白夜叉とは呼ばないんだろうなと思った。これもなんとなくの勘。

…というか、次があるのか。俺はもう二度と会いたくない。






似非魔法使いさまへ
リクエストありがとうございます!最初はifとしていましたが、番外編にしました。紅桜へのフラグですね。紅桜を書くのかは微妙ですが。たぶん書くと思います。
企画参加ありがとうございました!

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