朝。あれ。
「おーい、ちびー?」
一緒に寝ていたはずのちびが見当たらない。まったく、かわいい恋人をこごえさせてなにやってんだアイツは。大人しく人間カイロしとけってんだ。低血圧のくせに早起きなんてして。
「ちびーどこだー」
「なんだよ」
あ、いた。
「いきなりベットから居なくなってんじゃねえよー。びっくりするじゃん。なにより寒いじゃん」
「だったらなんだ、いちいちお前を起こしてベットから出ると報告すればいいのか」
ふむ。そう言われるとそれはめんどくさい。だがしかし。
「じゃあ私が起きる前に起きるな!起きてもじっとしてろ!」
「…相変わらずだな」
えー。相変わらずってなにが?女の子のワガママはさらっと叶えてあげるものだろ。ワガママっていう自覚はある。一応。だって寒い。エアコンないし、布団も薄いし。
「なんのためにリヴァイと一緒に寝てると思ってんの?寒いでしょうが!」
「…お前、俺のこと本当に好きなのか」
はて。今さらそんな質問が出てくるとは。名前ちゃん微塵も予想していなかったのだよ。だって、そんな、当たり前のこと。
…ああ、当たり前だからこそちゃんと言わないといけないのか。じゃあ、大サービスで直球で伝えてあげようではないか。
「愚問だね。食べちゃいたいぐらい大好きに決まってるでしょ!」
リヴァイの目が一瞬見開かれたかと思うと、即座に微妙な顔になった。なんだ、なにか文句でもあんのか。
「…洒落になんねえ」
まったくもってその通り。
まあ、ちびの分かりにくく微妙に照れた顔が見れたので私は満足です。
***
「いっただきまーす」
腐ってるとはいえ流石は貴族。そこら辺の奴らよりは肉付きがよくおいしそうだ。久々の食事にありついている私の後ろではちびが、うげえみたいな顔で佇んでいる。だからついてくんなって言ったのに。そう口にすると、
「うるせえな。とっとと食えよ」
と返ってきた。偉そうに、とか色々言いたいことはあったが大人しく食事を再開する。自分が化け物であるということに、負い目を感じていないわけでもなかったので。
しばらくして、そこにさっきまでいた筈の人間は血の跡以外なにも残さず消えた。私の胃袋の中にな。
「食い終わったか」
「うん、まあ」
そう返事をすると、リヴァイがこっちをじっと見てきた。なんとなく探るような視線だったので微妙に居心地が悪い。なんだよ、と文句を言おうとした瞬間、え、ちょ、な、
「な、にして…!」
「血の味がする」
血の味がするって。だったらこんな、殺人現場で。そりゃあ血の味もするでしょうよ。
俯けていた顔をちびが覗き込んでくる。私のほうが微妙に背が高いから顔なんか伏せてたら逆効果だと、思いついても遅かった。再び唇が重なる。
「お前とのキスはそのまま食べられそうで怖い」
「だ、ったら、舌とかいれてんじゃねーよ、なまいき」
私を慰めようなんて百年早いんだよ、ちびが。本当に食べるぞばかやろう。
霞桜さまへ
リクエストありがとうございました!
「食べちゃいたいくらい大好き」と「血の味がする」と「お前とのキスはそのまま食べられそうで怖い」を言わせたいがために書きました。頑張って甘くしようとした結果、死体の前でいちゃつくという惨事。何気に当サイト初のキスシーンです、確か。こ、こんな感じでよろしかったでしょうか…。
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