×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



ふと、唐突に諦めることを知った。どうしようもない。足掻けない。俺が俺じゃなくなった原因は分からないけど。だからこそどうしようもない。飛んでいった、親の腕。たぶん本当は殺すつもりだった。止まらなかった。だから、親に殺されそうになったって仕方がない。しかたない。しかた、ない。そう思う。思わないと。父親はきっと気づかない。俺に。息子が別人になっていることに。父親の腕を刈った瞬間、息子はどこかに行ってしまって、ここには俺しかいない。もしかしたら、あなたの息子は父親を殺ろうとすることに自分が思った以上にショックを受けたのかもしれない。そうだったらいいなと、希望的観測。好き好んで親を殺すような奴でなければいいなって、思ってる。俺じゃないよ。ないよ、ね。
俺と息子が同一人物だったら、どうしよう。じゃあこれって、現実逃避中?なんで?どうして?どうしよう。もしそうだったら。どうしよう。妹が、神楽が父親を止めている。おびえた眼をしてる。大丈夫だよって、笑ってあげないと。でもお兄ちゃん、血だらけで動けないや。目の前が真っ赤でさあ。赤いフィルターでもかけたみたいだ。体が鉛。体は鉛。鉛は体。ぼんやりと思考。あれ俺、神楽って、妹って知ってるんだ。知っているはずがないのに。あれ、俺は俺で、一人しかいない?殺そうとしたのも、殺されそうになってるのも、俺?そんな、あれ、あれ、あれれ。あはは。「あっはっはっはっ」困ったから笑う。そうだ笑おう。殺そうが殺されようが笑ってよう。アハハハハハ。俺は誰だろう。このまま運よく死ねたらいいのに。

***

春雨に入ってから数年。俺は地球の吉原にいた。

あ、

「知り合いでもいたか?」
「いや。もう関係ないや」

うーん、あれ神楽だったよね。遊女っぽい格好してたけど。まだ生きてたんだ。俺はあの後、家から逃げ出したからなあ。

どうして、こんなことになったんだろう。

妹だったらしいやつを叩き潰して。死んだかな、死んだよな。今までのもそうだったし。恨まれても恨まれても足りない。血がざわざわざわ。熱くなって、体は勝手に殺しだす。制御不能なのは身体だった。あと、本能。理性なんてありはしない。止まらない。あの子は本当に、俺の妹だったのかなあ。なら、神威を殺してくれたかもしれない。もう遅いけど。
皆、俺を恨めばいい。憎めばいい。殺す気でかかってくればいい。そうでもしないと、神威も俺も死なない。いや、そもそも俺なんていないのか?俺も、もともと神威なのか。
だったら尚更。自分を攻撃したがらないこの身体を殺してくれ。弱いやつに用はない。俺を殺せないやつに興味はない。邪魔だから消えてくれ。消えないから殺すけど。消えなくても殺しちゃうけど。あーあ、妹も殺しちゃったし。

「どうかしたか、団長」
「ううん、なんでもナイ」

とりあえず、鳳仙の旦那と殺し合いでもしてこようっと。


***
タイトル by「レインコート/憧憬/嫌悪/理解」ヒッキーP





琴葉さまへ
リクエストありがとうございます!まさかこの話に需要があるとは思ってもみなかったので嬉しかったです。
結局、この話の主人公は神威に憑依してきたのか、神威が作り出した別人格なのかは曖昧です。私もあんまり考えてません。どっちでもいいかな、という感じです。
ただこの続編を書いてるうちに「殺しちゃうぞ」とか「弱い奴に興味はない」の台詞を有り得ない方向に捉えることが可能と気づいたので書いていて楽しかったです。
あと、題名の「レインコート/憧憬/嫌悪/理解」という曲は、書いた後でふとあの曲にぴったりなのではないかと思いつけた題名です。「殺したい。嫌い。殺したい。嫌いなだけ」とか「あなたの言葉が信じてたなにかを壊してく」とか。ただ、好きな人は好きだろうけど嫌いな人は嫌いな曲なのでもし聞いてくださるときは注意してください。特にボカロ嫌いは止めた方がいいと思います。
えーと、思った以上の長文になりました。すみません。
これからも当サイトをよろしくしてくださると尚嬉しいです。

back