×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

今、悩み事が主に二つある。なぜだか人生のモテ期がきているようで、両方とも恋愛絡みだ。しかもどっちもややこしくて、一筋縄では片付かない。
三島ユキ。前世らしきものでは巨人なる化け物と戦ったりしてたが、平和ボケした世界に生まれて16年。花の高校二年生である。

まず、一つ目というか一人目。そいつは同級生だ。そりゃあ私だって(今では)普通の女の子なわけで、好意を寄せられることが嬉しくないわけじゃない。ただし、限度があるだろ。
一回告られて、フッたにも関わらず付きまとわれたら嬉しさなんて照れと共に宇宙の彼方にハイキングにだって行くわ。つまり一言で言うと、しつこい。
断ったのに大した理由はなく、なんとなく好きでもない人と付き合うのに抵抗があったとかまあそんな感じだ。なんてったって、前世で人が簡単に死んでしまうってことを散々思い知ったわけなので。あんまり大勢の人間と深く関わりたくないなー、なんて思ってみたりしちゃうわけですが。
あの時断らなかったら今頃どうなっていたことやらと戦々恐々してる。まさかあんな粘着系だったとは。身の危険を感じる。いや、私だって伊達に元兵士やってたわけじゃないし、今だってやや鍛えていたりするわけで肉体的には負ける気は微塵もないけど。なんか、こう、もっと違うところで身の危険を感じる。

ていうか、今後ろに居るよね絶対。

別に人間相手にどんちゃんやってたわけではない私は、人の気配というのに鋭いわけではない。が、それでもただの一般人よりは分かると思う。いやもうこの目立ち過ぎる気配は一般人でも分かると思うの。
す、ストーカーだと…!?
同学年の女子にストーカーってどうなの。ちなみに今日は土曜日であって、学校はない。それがつまりどういうことを指すのかというのは考えたくもない。こういう場合はどうするべきなのだろうか。鳥肌がさっきからこんにちはしまくってるよ。
き、気持ち悪っ!

とりあえず撒くべく、次の曲がり角でどっか脇道に逃げようと走り出す。すると後ろの足音もダッシュを始めた。うぎゃあおぞましいよ。余りのおぞましさに前方不注意になっていたらしく、曲がり角で人にぶつかるというお約束をやらかした。

「いたた…」

かなりのスピードでタックルをかましてしまったため吹っ飛んだ相手の様子を窺うべく立ち上がった。この際後ろから迫ってくる危機はいったん脳内から追い出す。

「すいません、大丈夫ですか」

そして私の声で相手が顔を上げた。

………………うわあ。今日はとことんついていないらしい。

「あれ、先輩?」

二つ目もとい二人目のお出ましだ。災難すぎる。


***

「どうしたんですか、先輩?」

あの後。背に腹は変えられぬ。気持ち悪い同級生よりまだ可愛い後輩だと判断し、後輩ことエレンを引っ張って適当な喫茶店に入ったわけだが。ちなみにエレンを置いて逃げるという選択肢を選ぶともれなくコイツも追いかけて尚ややこしい結果になるので渋々連れてきた。まあ途中から誰かに追われて逃げてるってことに気づいたエレンがかなり複雑に走ってくれたので無事同級生もといストーカーを撒くことも達成したのだけど。

「ていうか誰から逃げてたんですか?」

一難去ってまた一難。一人撒いたからといってコイツまで着いてきたらなんの意味もないじゃないか。

「ユキ先輩が困ってるならいつでも助けますよ!俺」

ちなみにさっきからコイツ、私が全く返事をしていないにも関わらず一人でくっちゃべってる。いやこうして慕われてるのが嫌なわけではないけど、やっぱりこの子も限度を越えてるわけなのですよ。

「あー、告白してきた同級生に、なんか、付きまとわれてて」

「は?」

なるべく簡潔に現状を説明した。エレンくん、眼が怖いです。

「先輩何もされてないですか無事ですか!」

いや心配してくれるのは嬉しいんだけどね。

「ああ、うん、なんもされてないよ」

そう返事をすると黙り込むエレン。なんだ私がなんかされてた方が良かったのか?こんなことを口にしたところでめんどくさいことになるのは目に見えてるから言わないけど。それに自惚れるならエレンがそんなこと思うわけないと思うし。

「でも、せんぱい、あの野郎に付きまとわれてたんですよね?困ってるんですよね?」

「…うん。ま、あね」なんだこの嫌な予感。
すると怖い顔から一転、エレンは可愛い良い笑顔になって言った。

「分かりました!そいつ殺してきますね!」



……勘弁してくれよ。