チャイルドシートは赤色で



※幼児化


いつも通り朝起きる。まず起きたら顔洗って髪整えるんだけど、そういう一通りのする事を考えて、それから今日は他地区の情報を探しに行こうとしていた事を思い出した。リーダーだから、と思っていつも一人で情報探りに行くけど、たまには誰かしら連れていこくのもありだろ。うん。頷いて、寝ていた数人掛けの黒いソファから体を起こす。ちなみにこれ俺の寝床。

起き上がって、地面に足を付く。なんか違和感があって、足痺れてんのかと足を一瞥。血の気が引いて、それから恐る恐る自分の掌を見る。
意味がわからなくて呼吸がしづらくなって、落ち着く事を優先して立ち上がった。

まだ夢を見てるんだ。そうに決まっている。有り得ない。有り得えない。

いつもは腰の位置辺りにある机が、何故だか目線より上にある。前方に伸ばすと見える掌は、子供独特の小さくふっくらとしたもの。寒くて、体に触れると裸だった。ソファを振り返ると、そこには俺が着ていた服が落ちている。やばい泣きそう。なんだこの悪夢は。

俺、子供になってる。

「………ありえねぇえ…」

うわ声高い。俺って確か声変わりはたいした低さにならずに早く来たはずだった。だからつまり今は大分小さいのか。何歳くらいだよ。夢にしたって質が悪い。
ソファに置き去りにした服を見て、とりあえず寒さを凌ぐ為にソファに置いておいた薄い毛布を体に巻く。
納得なんかしたくはないけれど、だが自分の体を客観的なものから確認したくて洗面所に向かった。端が汚れてはいるが、大きな鏡があるから。



申し訳程度に場所が設けられただけの狭い洗面所に入ると、クロウが顔を洗っていた。見上げるクロウは新鮮で、暫く眺めてしまう。
きゅっきゅ、と蛇口を締める音の後、クロウは掛けてあるタオルでぞんざいに顔を拭いてからくるりとこちらを振り返った。俺に気付いてがくんと下げられたクロウの目と俺の目線が合って、暫し互いに黙る。

「……お前……何処から入ったんだ?」

言い、クロウは吃驚した表情から一転、見てると落ち着く優しい笑顔でしゃがむ。俺の高さに目線を合わせて頭を撫でられた。どうやら他所の子供だと思われているようである。今の俺はどれだけ小さいんだ。

「…クロウ、あの、な、俺、鬼柳…なんだよ」

「はあ?」

苦笑してポンポンと頭を撫でられた。これ完璧に信じてないな。ひょいと抱き上げられ、片手で抱っこされてしまった。この体制はクロウがガキ共によくやってるやつだ。まさかされる日が来るとは。
抱き上げられて、必然的に前方にある鏡が見えた。6歳くらいの見覚えのある自分がクロウに抱き上げられている。

「チームサティスファクションのリーダーごっこか?」

「違う!だから俺は…」

「……あれ?」

まじまじと顔を見られ、思わず反論の口を止める。きつい視線に身を引くと、クロウの茶化すような表情がみるみる真面目なものになっていった。

「……おいまさか……鬼柳!!鬼柳どこ行った!?まだ寝てんのか!?」

「耳元でうるせぇよ!!」

いきなり騒ぎ始めたかと思えば、クロウはドタバタとアジト内を走り始めた。アジト内の他の部屋を見て、空き部屋を見て、それから外を一瞥。溜息を吐いて、俺をソファに座らせた。

「…お前、鬼柳の隠し子か?」

「……馬っっ鹿じゃねーの、年あわないだろ」

真剣にそんな事を言うものだから、つい笑ってしまう。クロウは俺の返答を聞き、「口調が…」と呟き、わからないといった顔で思案を始めた。同時に、クロウはソファに置いてある俺の服をみる。すぐに薄い毛布しか身に纏っていない俺と見比べて、信じられない、そう言いたげな顔で俺の顔を見た。

「……鬼柳なのか?」

「ああ」

「…マジかよ」

「俺も信じられねーよ。つか夢だと思ってる」

夢、とクロウは復唱する。しかしすぐに首を横に振って、神妙な顔で立ち上がった。追って目線を上げる。

「とりあえず、遊星とジャック…呼んで来る」

「うん。よろしく」

そう言って踵を返すクロウを見送った。側にある自分の服を手繰り寄せる。まともに着れる訳のない大きさに溜息を吐いた。俺ってなかなかガタイ良かったんだな。




遊星とジャックが来て、まず二人は目を丸くした。俺自身よくわからないけど、軽く事情を説明して、それから、最初はどうするかという話、いつ治るのかという話題ばかりだったのが、いつの間にか話題がずるずるずる…意味わからない方向へ向かっていた。

「服を調達して来た」

「おお、お疲れ様、遊星」

笑顔でそう言う遊星とクロウ。こんもり盛られた服を受け取るのはジャック。確かにいつまでも毛布に包まっている訳にはいかない。いかないけれど、盛られた子供服の中にスカートだったりワンピースだったりが混じっているのが恐ろしいのだが。

「これなんかどうだ、鬼柳」

「…なんだよそのフリフリ」

ジャックに差し出された服はスカートにびらーっとフリフリが付いてて、なんか華やかで白くて可愛らしい。どこで拾ってくんだよ。
スカートとか論外だから、ソファの上に立ってジャックの手中にある服の山に手を伸ばす。大分高い位置にあって困ると、ジャックはしゃがんでくれた。
あんがと、と呟いて服を選ぶ。

「…それにしても、鬼柳…可愛いな」

「は?」

遊星が変な事を言う。吃驚して遊星を見ると極めて真顔。
遊星ってショタコンだったのか、怖いな。
気にしないようにして再び服を探す。ロリータとかゴスロリとか薄青のワンピースとか可愛いらしいフードのついた服とか、なんかまともな服がないんだが。なんでかスカート以外の下の服がズボン一つしかない。すごい可愛いらしい短いやつ。遊星、俺男なんだけど。
仕方なくそのズボン引っ張り出して、それから薄青のワンピースを出した。その薄青のワンピースは(他のと比べると)大分飾り気がなくて、短いいからズボンとこれなら男としてそんなに支障ないだろう。

「それにすんのか?」

「うん。着替える」

「って、うわぁああちょっとタンマタンマ!!」

「は?」

着替える為に毛布を取って置こうとしたら、クロウに全力で止められた。いや意味わかんないって。

「なんだよクロウ」

「そうだぞクロウ、何を止めてるんだ」

「全くだ」

「うるせぇよ馬鹿共!お前らが危ないんだよ!」

俺に続いてジャック、遊星と文句を言う。クロウは怒りながら二人を指差した。何が危ないんだ?首を傾げて二人を見ると、実に爽やかな笑顔だった。よくわからない。



結局服は別室で着替えた。それから落ち着いて大分遅い朝飯を食べる。俺このまま一生これなのかな。いつ治るんだろう。

「あーん」

「…遊星、俺ガキじゃねーよ?見た目だけだから」

人が物思いに耽ってると、真顔な遊星にあーんされた。食えない訳じゃあない、食わないだけだ。
ぺし、と掌で遊星の手を退けると遊星は笑む。だらし無い笑顔に思わず引いてしまった。なあ遊星お前ってマジでショタコンなのか。

「鬼柳、牛乳飲まないのか」

「え?なんだよジャック、いきなり…」

「飲まないと背が伸びないぞ」

「いつもは何も言わねぇくせに…」

ぐいと差し出された牛乳。俺が牛乳苦手なの知ってるだろうに。普段出されても、これ以上伸びたって仕方ない、だとか適当言って飲まないけど現在この状況では説得力は皆無だ。畜生。
仕方なく受け取って、一口飲む。うんまずい。有り得ないって。

「……なんだよ」

ちらとジャックを見ると、鼻元を抑えているジャックに目を反らされた。続けて遊星を見ると、遊星はガン見してくる。首を傾げてクロウを見た。クロウは苦笑する。

「付いてんぞ、牛乳」

「あ。…ん」

口端に付いていたらしい牛乳を指先で拭われ、体が揺れた。
あんがと、と呟く。クロウはどういたしまて、と笑った。

「おいクロウ、貴様なにしてるんだ」

「そうだ、何故拭いた」

「お前らいい加減にしろよ…俺はショタコンの気はない…!」

なんか言い合ってるジャックと遊星とクロウ。意味がわからないから首を傾げる。やはり飲みたくない牛乳をテーブルに置いて、大分少食になってしまった自分に吃驚しながら手を合わせて食事を終えた。


翌日、目が覚めると自分の姿きちんと大きくここにある。なんだ夢だったのかと笑って、起き上がるとキツキツな薄青ワンピースとズボンに絶望した。



***



満足同盟で後天性ショタ鬼柳総受け、という事で以上です!
なんだかアレな仕上がりになりまさたね…文句は受付ます…!orz

クロウはショタ鬼柳可愛いなって思うけど常識人、ジャックはショタ鬼柳を目茶苦茶愛でて、遊星はショタ鬼柳に全力で悶えて萌える、と思ったのでこんな感じ…。
クロウは「これ鬼柳なんだよな」と思いながらも、普段の子供達への接し方でいると思う。

ショタ鬼柳は素晴らしいです(^p^)

では、リクエストありがとうございました!







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