つまりのところは愛情です




遊星の背中ばかり見ていた気がする。遊星はあれだ、朴念仁。悪く言うと無神経。だけど天然とも言えた。


機械いじりが好きな遊星。つまらない。機材いじり中は構ってくれないから。けれどその遊星の背中には見惚れる。男らしい、というのか。いや男らしさに負ける男なつもりはないけど、だけどカッコイイ。何かに集中出来るのは凄い事だ。正直、あの集中力は尊敬する。
もう寝ようと上着を脱ぎながら、遊星の背中を見て思った。手袋を外して、上着と纏めて小脇に抱える。

今何をしてるんだ、と尋ねるのは禁句。無視されるか、ウンチクを長々語られるかのどっちかだからだ。机が目の前にあるっていうのに床に座る遊星の後ろに座り、ひょいと覗き込む。
明かりがランプのみで暗いというのに、さくさくと進む作業。よくわからなくて首を傾げ、遊星の顔を見た。真っ直ぐ機材に目が行っていて、しかもその目はなんだか輝いて見える。
かちゃかちゃと鳴り続ける音が妙に耳に馴染んで、暫くそのまま眺めていた。遊星の指先は綺麗で長い。その指が固いのも知っているけれど、けど機材をいじる指先は本当に綺麗だ。
座り続けて痛くなって来た足を動かすと、床に着いていた手が遊星の足に触れる。あ、と声を上げて下がるが、遊星は何もなかったように作業を続けていた。

相当集中しているな。ともう呆れすら入る。俺の存在にも気付いてないんだろうな、なんて。
あれ?俺って機材に負けてるのか?なんか淋しい、な。
というか、目の前に遊星居るのにこの話し掛けるのも無理って。生殺し。とも違うけど、うん、淋しい。

肩に触れたくて、床に着いていた掌を上げて、それからすぐに止めた。邪魔をするのは嫌だ。
けどやっぱり淋しい。ボキャブラリー少ないのも情けない。

また暫く眺めて、ふと時計を見ると短い針は真右を指していた。よくまあ飽きずに見ていたな、と自分に吃驚して、いい加減寝るかと立ち上がった瞬間、カッと小さい音がして、ころころとボルトが床を転がった。
遊星の手中から落ちたらしいそれは俺の足元に転がって来たので拾い上げ、しゃがんで遊星の前に置く。
作業ミスをするのは珍しいよな、と遊星を見て見た。同時にぐい、とシャツを引っ張られて体がつんのめる。勢いあるその行動に息をするのも忘れて、混乱した。
しかし乱雑な行動には合わず、ちゅと可愛らしいリップ音がする。額に遊星の唇が当たり、そうしてシャツを離された。

「おやすみ」

「……」

遊星は笑いながら言い、俺の頭を撫でる。え、とだけ発した唇を開けたまま呆然としていると、遊星は困ったように笑った。

「寝るんだろ?」

「え、あ…まあ。…え?あれ、お前…だって」

機材いじってたじゃねぇか。ぽつりと小さい小さい声で言うと、遊星は今度は唇にキスする。擽ったくて身を攀ると、遊星は俺の髪を撫でた。

「鬼柳に見られてると、作業の効率が上がる。背中を見られているのも」

なんだよそれ反則だろ。いつも見てんの知ってんのかよ。
なんだか恥ずかしい。なのに馬鹿みたいにときめくのが、もっと恥ずかしくて顔が熱かった。



***



遊京との事で、甘々遊京になります!
遊星は機械>鬼柳でも、機械=鬼柳でもなく、もう二つとも別物で大好きならいいよ。
そんで鬼柳はそんな遊星が好きだけど、構ってもらえないのが淋しい感じです。

では、リクエストありがとうございました!







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