冷たい空気



※性的表現有


京介と俺が似てるとかはよく言われる。髪型もよく似ていた。
でもこれ以上短くするのは、俺のセンスには合わない。それに妙に長くするのは嫌で、伸ばすんなら馨介くらいに伸ばしたかった。すると今度は馨介と似るんだろう、と苦悶。
だからとりあえずこの長さ。

まあつまりこの長さがいい自分は、感性までも京介や馨介に似ているんだろう。
昔、良い点だったテストを馨介に見せた時に「京介に似てきたな」なんて言われた。馨介は口を滑らしたというか、言葉を間違えたというか、多分そういうミスをしてしまっただけなんだと思う。
気にしないつもりだったけど、なんだか反抗したくなった。あれだな、反抗期。
このまま順調に成長すると、京介になるんじゃないか、って思ったんだと思う。幼心にも。

つまり俺は京介と違う人になりたくて、違う性格になろうと頑張った。

結果こう。
成績悪いし、素行も悪い。
説教されても改善しないし、挙げ句売春したりだとかしてる。

上手く京介からかけ離れた俺。でも少し淋しい。
結局自分は京介に憧れているのかもしれない。
テストで褒められないし、皆勤賞も貰えない。親友も出来ない。仲のいい奴らはいるけど、心から信頼されてる訳もない。
淋しい。でももう戻れない。

京介の親友が羨ましかった。たまに家に遊びに来るのだが、性格が様々で、しかし皆優しい。
それがすごくきらびやかな物に見えた。手に入らない物のような。




「なあ。だんまりは止めろよ」

俺、何したかったんだっけ。眼前に居る京介の親友を見て、特に何も考えてない頭を働かせる。
京介が羨ましかった。こんな素敵な親友が居るのが。だってカッコイイし?ずるいじゃん。
俺は京介に似たくない一心で、こんな奴になったんだから。京介がいなかったら、こんな親友が俺にも居たかもしれないのに。しかも、アイツのせいで俺こうなったのに京介は説教しやがるんだ。いらつくったりゃありゃしないわな。

でもさ、やっぱり今の俺ってば、売春常習犯だから親友には見れないのな。
モノがデカイとか小さいとか、上手いとか下手とか、早漏とか遅漏とか。ごめんね。

なんとか遊星。京介の親友君。
なんか京介に惚れてるみたいだったから、なるだけ京介のマネしながら遊星に惚れてるようなモーションかけたら、まんまと抱いて下さいましたとさ。俺ってば京介にそっくりだからね。
けどなんか思い詰めた顔で俯いてる訳だ。
京介の代わりに俺を抱いた後悔か、それとも京介をそういう対象で見てしまっていた事を悔いているのか。まあなんにしても馬鹿みたいだな。と思う。

「聞いてる?」

「……あのな、鬼柳」

「きょーすけって呼んじゃえよ」

「……」

けらけら笑って布団に潜る。
遊星の部屋は馬鹿みたいにシンプルだ。男の一人暮らしだってのに片付いてる。
ベッドはふかふかだし、柄もセンスがいい。
この部屋で何回京介の事考えて自慰っちゃったのかね、なんて考えると、今更非生産的な同性愛が不思議に感じる。

「京介」

「……まいっか」

じい、と真っ直ぐ目を見られて、たじろぎながら笑う。
やめろやめろ。京介と重ねて貰うつもりだったけど、そんな真剣に重ねるなよ。
次に京介と話し辛くなるぞ。

…まあ、それはそれで楽しそうだけどよ。例えば遊星が京介を押し倒したりだとかしちゃえば、そしたら京介は親友が信じられなくなったり。
一度ずるずると落ちれば、京介は俺と似てるから、今の俺みたいなクズになるんじゃねぇの?なんて思った。
遊星には悪いけどさ、それはいいかもしれない。

「……遊星」

布団の中で身じろぎ、遊星の腹辺りに抱き着く。
驚いたように体を引く遊星の体に、そのまま頬を擦り寄せた。少し黙って、そのまま見上げる。慣れてる動作ですと、上手い事上目遣い。

「…俺、遊星が好きだ」

「…き、鬼柳…?」

「だから、きょうすけだってば」

ぐい、と腕を遊星の首に回す。肩口に頭を埋めて、愛しそうに抱きしめた。
顔の赤い遊星を確認して、恥じらうフリをしながらぎゅっと強く抱きしめる。

「も…う一回、しよ?」

「……京介、」

「…遊星は俺のコト嫌いか?」

あからさまに悲しそうな声色を作る。まんまと動揺する遊星が面白くて、そのまま離れた。
京介って、妙に引き際いいからさ。マネしないとな。

「…じゃあさ、フェラ…させて?」

恥じらうフリ恥じらうフリ。いつからか恥じらうなんて忘れ俺です。難しいな、と考えつつ、控え目に遊星の太股に手を添える。また上目遣いを忘れずに伺うと、顔を真っ赤にした遊星と目が合う。と同時に、どさっとベッドに押し倒された。
ヤバイ、超楽しい。初めて京介に似てていいなと思ったわ。

勢いで口付けられ、歯がガチリと鳴るのも気にせずに、熱い舌が上顎をなぞる。性的なその深い口付けに、そういう時期の人なんだなと再認識。流石に俺が童貞奪ったとかないよね、なんて内心笑う。
唇が離れると、二人分の唾液口の端を垂れた。
がこのくらいの口付け、慣れているけれど息が上がったフリをする。ウブなのが好きなんだろ、京介もそんな奴だろうしな。





京介、京介、何回も呼ばれる。さっきは殆ど無言のセックスだった分、今のセックスはすごい変な感じ。
俺の体を抱きしめて、体を揺さ振る遊星。ま、はっきり言うとモノはデカイけど動きが素人臭いから、多分俺童貞奪っちゃったわ。ごめんね。

「ぁ、あっ…ゆ…ぅ、せいッ…」

甘い声。もうサービスだぞ、とばかりに引っ切り無しに声を上げる。気持ち良いけどさ、でも俺騎乗位が好きなんだよ。がくんがくん自分で動いて、いいように気持ち良く出来るからさ。
でも“ウブな京介”はしないだろ。だから我慢我慢。

愛しそうに躊躇いがち、を意識して遊星を見上げる。目が合うと、律動の激しさが増した。
ギシギシ鳴るベッドがエロい。絶頂が近くて、遊星の背中に爪を立てる。

「ひっ、…あぁあ――――…っ!!」

頭真っ白。こん時が大好きなんだよな。考えて、たまんないくらい気持ち良いから涙出て来た。顔も熱い。
続けて中に熱い液体が注がれて、ぞくぞくする。さっきはしなかったクセに、中出ししやがった、と思う反面、エロ本なんかの記述を思い出す。
ぐち、と抜かれて、太股に白濁が流れる感覚に身震いしながら、口を開いた。

「遊星…の………」

足を閉じて、白濁の感覚に身を震わせながら恥じらうようにして言う。と、膝立ちしていた遊星は、また顔を赤くして目線を反らした。確実に童貞だよな、と再認識して、恥ずかしがるように布団に入る。

ふと思った。
遊星はこれさ、俺を京介として抱いたけど。だけどもし狂介が好きになったらどうしよう。
まあ無いだろうけど、もし、な。もし好きになられたら。

ないよな、とまた思ってから、抱きしめてくる遊星に笑い掛けてやった。



***



京介に似たくない狂介。
と、京介が好きな遊星と付け込む狂介。
京介があまりにも遊星の事を親友認識するから、遊星も愛を伝えにくいとかそんな。

もうこれいっそ遊星は狂介の事好きになってもいいし、京介押し倒しても美味しいよ。
むしろ狂介が無自覚に遊星に惚れればいい。

そして狂介はこんな風に他人煽るのが大好きならいいよ。







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