サイト内の設定とは違う現代パロディでラモ京
※頭の弱い、や、知能の遅れた、などの表現がありますが決して悪意のあるものではありません


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独身一人暮らし、未婚ならば当たり前な出世止まり未来はあるかなしか金はまあある、そんなラモンは数日前から妙な奴を居候させている。
先日質の良いコンポを買った。あとテレビも。どちらも値段に相応しく良い仕事をしている。
あとインテリアにも凝っていた。如何せん彼は金持ちの坊ちゃんで、今でこそ援助はしてもらっていないが若い頃に貰っていたお小遣を手堅く貯金していたので、ビックリするくらいに余裕がある。良家の三男ならではの悠々自適ライフだ。

で、つまるところそういうのと同じくくりである、彼が家へ居候させている輩は。
フルハイビジョンの素晴らしい画質を誇るテレビや、質の良いカットの素晴らしい灰皿、美しい皮張りのソファ。そして純白のカーペット。
それ同様のインテリアである。ラモンは今日も素晴らしく自分好みに整った部屋に出迎えられて良い気分で帰宅をした。
カーペットに寝転がる180cmあるインテリアは寝ているのかゆるゆると睫毛を震わせるばかりで、起きる上がる気配がない。

「帰りましたよ」

「ん、」

のたり。インテリアは両手をカーペットに着いて上体を起こした。
長身である筈なのに、それはあまりに色白で痩身でなぜだか華奢な印象を見せる。肩甲骨より下辺りへ伸びている髪の色素が薄いからもあるのだろうか、あまりに頼りない雰囲気のする背中だ。

「……おかえり」

「ええ。ただいま」

ゆっくりと振り返るインテリア、もとい鬼柳京介は時間をたっぷりと使い見上げて微笑む。
男である筈なのに彼は余りに美しい。顔立ちは人より良い、というくらいなのだが、如何せん雰囲気が魅力的なのだ。
ラモンはインテリアを選ぶ際には値段や機能性ではなく、雰囲気で選ぶ節がある。なんとなく気に入ったものを迷わず購入するので、案外室内のインテリアの方向性はバラバラであったりしていた。

それで、鬼柳京介だ。
彼はラモンの好みど真ん中を貫く容姿及び雰囲気及びステータスをしている。

「夕飯はどうしました?」

「……まだ、何も、食ってない」

「ああ、じゃあ何か取りましょうか」

「ん」

こくんと頷き鬼柳はソファへ上体を乗せる。くたんとした腰はいまだカーペットにぺたりと着き、眠そうな様子が漂う体制だ。
ラモンはそれを愛おしそうに見下ろす。

白い肌も、琥珀色をした瞳も、水色混じりな銀髪も、病的に細い体も、高い背丈も、けだるげな仕種も、儚い雰囲気も、程よい高さの声も、少しばかりふてぶてしいけれどそれよりも切ない様子の強い性格も。なにもかもがラモンの好みだった。

「今日は何してたんですか?」

「テレビを見て…あと、…寝てた」

「そうですか」

くたりとソファに顔を預ける鬼柳の額にキスをして、ラモンは笑う。

ラモンが鬼柳を拾ったのは先月だ。河川敷でただ座っている彼に一目惚れをした。そして数時間用事を済ませて再び河川敷を通ったら、鬼柳が同じように座っていたので声を掛けたのである。
よくよく見ると彼は黒いスーツを着ていた。線香の香りがして、少し悲しげにラモンを見上げていた。
あとはラモンの切磋琢磨である。親切な大人のフリをして彼と親しくなり、片親が亡くなったのだという20歳のその青年を保護したのだ。
親を亡くしたショックか、もともとそうだったのか。鬼柳は少しばかり知能が遅れているように、ラモンは思えた。

「ラモン」

「はい?」

「好きだ」

「…………俺もです」

出会った時に使った敬語をラモンはまだ抜けずにいる。彼は、鬼柳はあまりに純粋である。ラモンはなんとなく以前見たドキュメンタリを思い出した。
知能が遅れている子は心に善悪がないのだと。だからいつまでも天使のように綺麗なのだと。
この青年はドキュメンタリで取り上げられていた子のように、生活に支障をきたす程のものではない。だが似通ったものがある。

だからラモンはいまだに敬語をやめれずにいる。下心しかなかったくせに、額にキスしか出来ず彼を養っていた。

「愛してますよ」

「ん、」

綺麗な髪をかきわけて白い額にキスをする。そうすると鬼柳は喜ぶのだ、子供のように。
鬼柳は難しい数式を解ける。英語も読める。漢字だって書ける。だがどこかぽやぽやとしていた。善悪がない赤ん坊のように。

「俺も、ラモンを愛してる」

ああなんだってそんな顔をするのか!ラモンは苦笑いでごまかして、内心憤った。今すぐ押し倒してしまいたかったが、そうしたくない気持ちの方が圧倒的に強い。

「もう一度、キスしてくれないか?」

えへへとばかりに笑う鬼柳を見下ろしてラモンは憤慨する。いい加減にしてくれ、押し倒されたいのかこの野郎、と。しかしラモンは笑顔のまま、なんとか彼の形の良い額へキスをした。








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