伝染る




※性的描写有
※といっても、フェラーリと自慰しかないです



もう何日此処にいるんだろうか。
元々、あまり治安の良くない町であったからあまり疑問は持たなかったが、前方に見える格子は中々に頑丈だ。チェーンソーでも壊すのが難しそうに見える。つまるところ、脱走は困難である。
そして両手首に軽い拘束具が施され、それはセメントで打たれた壁に繋がっていた。鎖やらの拘束具を激しく嫌うあの人は、手首のゴツい枷にアルミ質で伸縮性のある特殊な紐を通して使っている。これは格子とは逆に、日が経てばその内に取れそうにも思えた。
まあ、取れたところでこの部屋はある種の牢獄である。出入口手前には頑丈な格子。奥に見える上へ昇る階段は、果たして一階に続いているんだろうか。第一に、まず此処が何階なのかも少し怪しい。

室内は吐き気がするくらいに快適で、溜息を漏らす毎日はあんまりにも退屈だ。革張りのソファがあり、カーペットが敷かれている。26インチの液晶テレビと立派な黒いテーブル。タバコも吸える楽な環境だ。
奥に続く部屋にはこじんまりとはしていたがシャワールームもある。
快適にはさせられているが、保険なのか首には俺のトラウマと言っても過言ではないだろう首輪が通されていた。あの青年のメカニックな親友が作業を手伝ったとしか思えない、見事な改造がされている。少し規定外れの行動をすると……あまり言いたくないが、痛い目を見る羽目になるという訳だ。

さて大体一ヶ月は此処にいるだろうか。いやもしかしたら二週間くらいかもしれない。いやもしかすると二ヶ月はいるかもわからない。…日記でも付けさせて貰うべきだろうか。


「ラモン、おはよう」

「………」

食事は日に三度。最初はあんまりにも、お世辞にも、いややはりあんまりにも美味しくない料理ばかりだった。しかし最近は普通に味わって食える物ばかりが出てくるようになった。
階段を下りてくる青年が、手に乗せたプレートを格子の中へ入れる。プレートがギリギリ入る汲み取り口を鍵を差し込み開き、食事を格子内に入れた。しっかりと鍵を閉めてから、格子の隙間に不健康に細い腕を差し入れて、ぐっとプレートを押し渡してくる。
自由に行動できると言っても、範囲が限られていた。わかりやすく範囲を言うと、青年が格子の隙間から伸ばした腕で押し渡してきたプレートの隅をギリギリ引き寄せられる範囲である。狭く聞こえるかもしれないが、室内は監禁部屋にしては存外広い。8畳はあるだろうか。

ああ少し遅いが紹介を。
俺はラモン。クソ生意気な死にたがりのガキを使って金稼ぎをしていたが馬鹿を見た中年だ。
そしてこの青年は鬼柳京介、通称先生。元クソ生意気な死にたがりのガキ。今現在俺はこの場所に監禁して下さっている。まあクソ生意気なのは、今もそうだな。

「朝ですか」

「ああ、7時ちょうど。外は雨で、……そうだ雨漏りとかねぇ?大丈夫か?」

「…………」

手繰り寄せたプレートをテーブルに乗せ、鬼柳を見遣る。格子の外で、隅に寄せて置いた椅子を引っ張り出して座ってこちらを眺めていた。いつもの光景である。
朝食はフレンチトーストに両面焼きの目玉焼き。それにコーヒーと、なんのスープだろうか少し濁っているのが正常な料理手順から生まれた色なら良いのだが。

「なんか欲しい物あるか?」

「………別に」

「雑誌とか」

「…いえ」

「DVDは?」

「いいです」

「そうか…」

この青年は、変人だ。どれかと言うと、かなりの。ちらと再び見遣ってから食事に手を付ける。

あの一件で、俺はセキュリティに送還される筈だった。実際、ロットンとバーバラ、それにマルコムもそう相成ったと聞いた。
のだが、俺を迎えに来たのはセキュリティの野郎共でなくこの不健康な青年である。お前このままだと面倒な目に合うぞと言う彼の目は、真剣だった。
そして彼はこうも言った。俺とお前の罪状はそう変わらない筈だ、同じように人を殺していた、むしろ俺の方が罪がある、不公平だ。と。あまりにも親身なそれに俺はつい頷いたのだった。
それからはあんまりにも馬鹿げた話である。セキュリティに捕まらないように手助けをすると宣った彼に着いて行き、町外れの部屋に入って、記憶はそこまでだ。激痛はした、かもしれない、記憶は朧げだ。そして気付いたらこの部屋にいたという話である。当時はまだこんなに快適な空間ではなかったが。

「美味いか?」

「ええ、まあ」

スープも単なるオニオンスープで安心である。美味いと素直に言える味だ。
最初の頃は食えた物ではなかった。だが二日意地を張って絶食した後では、なんでも美味く食えたのだったが。

再び鬼柳を覗き見る。慈しむような視線と目が合い、酷く居心地が悪い。口に含んでいたスープを飲み下してから何食わぬ顔で目線を食事に下げる。

あの人は、自惚れだとか自意識過剰だとか抜きで確実に俺に恋をしている。前から変人だとは思っていたが確実に同性愛者の年上好きだ。あの目は、態度は、声は、何よりこの監禁はそうでなければ説明がつかない。
だがいまいち納得がいかなかった。見返りがなさすぎる。監禁して餌付けして快適に過ごさせた先に、何を俺に求めるのだろうか。

「……先生」

「ん?なんだ?どうした?」

ばっと、先生…鬼柳は椅子から身を乗り出す。俺から話掛ける事は稀だ、嬉しいのだろう。もしかしたら、この監禁が始まってから初めてかもしれない。喧々囂々と、出せと叫ぶのを抜かすと。抵抗を止めたのは5日を過ぎた辺りだったか。

「中、入ったらどうです?」

「え」

「いや、だから、そんな遠くに居ないで」

両面焼きの目玉焼きには綺麗な焼け目が着いている。フォークで食べ易い大きさに切り、口に含んだ。黒焦げの目玉焼きばかり出てきた日々が大分昔に感じる。懐かしい。

「いや、だって。そんな、お前…」

わたわた。鬼柳は手をぱたぱたと動かして乗り出していた身を再び椅子に座らせながら困惑している。しまいに格子に額を付けて、無理だ、と呟いた。

やはりこうだ。この人は、一体俺に何を求めているんだろうか。格子越しのこの距離で俺を観察して、それで満足なんだろうか。
中に入って来てくれれば、まだ逃げ出すチャンスもあるのに。ああ、だから入って来ないのかもしれないな。だがそれにしたって、俺に何もしなさ過ぎだろう。
動物園の動物を檻の外から見る気持ちはわかる。だが触っていいなら、触るだろう。お世辞にも俺は猛獣とは言いにくい。牙がある訳でもない。ここ何日間は抵抗する気力もなく大人しくしてやっている。
まあチャンスがあるなら、逃げたい。だが正直、ここを出て行き場がある訳でもないのが事実だ。セキュリティにお世話になるのは目に見えているし、鬼柳京介という英雄にこの町が盲目になっているのもなんとなく知っている。逃げきれる自信は、まああまりなかった。

「俺がアンタに何するってんですか」

「……逃げる、だろ」

「……」

この人は阿呆だが馬鹿ではない。俺がこの町の人間の目に触れれば縛り首確定なくらいわかっている筈だ。だからこの人の言う、俺が逃げてしまう、という行為を拒む理由は露骨に拒まれるのが嫌だという事だろう。
再び此処に繋ぐ事を彼は出来るかもしれないが、だが逃げるべく彼に危害を加え蔑み牢屋を振り返らずに走る、をしないかと聞かれれば首を横に振る。勿論するからだ。

「先生」

「やめろ、見ないでくれ…頼むから…」

じっと見詰めるが彼はふるふると頭を振って顔を歪める。くしゃりとした顔は涙を溢れさせてしまいそうな程で、若い青年の葛藤がよく伝わった。

「鬼柳さん」

「待って、くれ、頼む…お願いだ、から」

罪悪感か下心か愛情か憎悪か嫌悪感か、様々なものに押し潰されそうらしく彼は格子に額を遣って俯いたまま、ただただ頭を振る。唇はぐにゃりと歪み、震えていた。

ポケットから尾を引き、格子の鍵のチェーンが腰に下がっている。あれを出してさっさと格子を開けてしまえばいい。
そうして念願らしい俺に触れればいい。その為に此処へ閉じ込めたんだろう。

「京介」

ぽつり。静かな地下室にやけに響いた俺の声は自分でも吃驚する程優しかった。びくっと一際震えた後に、彼は深呼吸をして見せる。そうして怯えた眼差しを俺にくれた。

「ら、ラモン…」

ああなんて可哀相な人なんだ。愛しさを隠したいのに上手く隠せない哀れな若者がそこにいる。
いつから俺を好きなんだろうか。あまりそういう素振りは見せていなかったが、そういえば今思うとそう感じさせる場面はいくつかあったかもしれない。同性愛者だと断定するには決定的ではなかったが、同性愛者だとわかってから考えるとそう思える事が何度か。

「逃げたり抵抗したりしませんよ」

「でも、」

「いいから」

上手く笑顔で手招きを出来ただろうか。躊躇う彼は唇をぱくぱくとさせ、外部からの酸素か内部からの言葉か、とにかく何かしらを求めて空虚に時間を使う。
そうして白昼夢でも見ているかのように鍵を取り出して格子を開けた。覚束ない手先はあまりにゆったりとしている。

恐る恐るこちらを見遣る彼はまるで大人に叱られに来た子供のように、様子を伺う可哀相な顔をしていた。だから極力笑顔で応えて遣る。俺の顔があまり愛想良くないのは生れつきなので、そんな笑顔で安心出来たかはわからない。
だが鬼柳の顔も少し笑みになったのはわかった。

「恨まれてるとか、思ってます?」

こくんと彼は頷く。格子を潜ってすぐの床にしゃがみ、まだまだ距離を空けたその場所でこちらを伺っていた。鍵は握り締めたままだ。

「あんたは俺をセキュリティに引き渡さなかった。しかもこの部屋で養ってくれる」

「……監禁、だ、こんなの…」

「そうですね。俺も最初はそう思ってました」

でも今は違う。貴方が好きになりました、なんて言えば彼は簡単に落ちるだろう。目茶苦茶に懐くだろう。簡単だ、本当に。
今町でかなり有力らしいこの青年を丸め込めたら相当に悠々自適に暮らせるだろう。最近おとなしくしていた理由も、彼を格子の中へ呼んだ理由もそれだ。
同性愛の気など俺には毛頭ない。だがセキュリティにも引き渡されずまた楽な暮らしに返り咲けるのなら、こちらの様子を伺ってくる哀れな青年に媚びを売るのも悪くないだろう。
彼がネコでなくタチであったら嫌過ぎる。だが俺にベタ惚れのようだしこちらの要望は聞いてくれそうだ。なんとかなるだろう。

「貴方が好きです」

「……なに」

「貴方のその悲しそうな顔も、時折する笑顔も、伺うようにする眼差しも。全部好きですよ、好きになりました」

嘘は昔から得意だった。けろりと言って退けて鬼柳の様子を伺う。信じられないとばかりに、いやなにを言われたか理解出来ていないのか、目を見開いた彼は口も開けて唖然としていた。

「俺から貴方には触れられない。……触れてくれないんですか?」

かしゃかしゃとわざとらしく拘束具を鳴らすと、鬼柳は目を瞬かせてから少しずつこちらへ寄る。
まあこの伺うような目線は嫌いではない。良い気分にはなる。鬱陶しいと感じそうな程のものではない、少し手前の優越感を覚えられるものだ。

「ラモン、好きだ……愛してる」

手を弾かれたら、拒絶されたら、罵詈雑言を並べなれたら。様々な恐怖があるらしく伸びる手は震えている。
それをこちらから握って遣り、もう片手で撫でた。拘束具が床に当たるたびに音をたてる。
細く白い指先から、目線を彼に遣った。すると恥ずかしそうに顔を引き攣らせているのが目に入る。少し、かわいく思った、猫みたいだ。

「やっと触ってくれましたね」

笑顔で言うと、安心したらしい鬼柳は口元を笑みにして顔を赤くする。そしてすぐさま涙をぼろぼろと流した。
ああなんて簡単なんだろう。簡単に落ちてくれた。こうなるまでが長かった。
あまりに早く態度を変えたら疑われるし、だからと言って長過ぎると鬼柳の興味を失ってしまうかもしれない。良いタイミングでこうして甘えさせる必要があった。
正直あまり同性とそういう関係にはなりたくなかったが、如何せん美形なので助かる。これが不細工だったら堪えられたものではない。まだ美形だから良い。まあ良いというだけで喜ばしわけではないが。







鬼柳京介とそういう関係になってから一週間が経った。こうして一週間で手枷を外してくれたのを見るに、このまま一ヶ月も甘えさせてやれば外に出して金もくれるだろうと今は尽くしてやっている、のだが事実上尽くされているのは現状俺だろうか。
いつもの地下室のソファの上で考える。俺の足の間に顔を埋める彼の頭を髪も巻き込んで撫でて遣ると、嬉しそうに喉を鳴らした。

「ん、…ぅ」

俺の性器を口一杯に入れて彼は嬉しそうに目元を緩ませる。フェラチオをされたのは四回目…というより格子の中に入った彼とそういう関係になってから、フェラチオしかされていない。
彼は結局タチなのかネコなのか、いや性器を美味そうに頬張るこの顔はネコだろうか。役割的な意味でも動物的な意味でもまさしくネコ、だろう。
性器を口から吐き出し竿部分を舐める彼は睾丸まで柔らかい唇でなぶる。どう考えても行為に慣れているそれに少し嫌な気分になるのは、俺にいっちょ前な独占欲が生まれたからだろうか。まあいずれにしようと彼のフェラチオは上手いもので、気持ちがいい。
つい快楽から寄った眉根に上目遣いの鬼柳は目敏く気付いたらしく、嬉しそうに息を漏らした。

「は、ぁ……イき、そうか?」

「……そう、ですね」

ああ喋らないと女みたいに見えるかもしれない。だがお綺麗な男をした青年が自尊心を投げ出してフェラチオをしている、というシチュエーションもなかなかそそる。自分は嗜虐趣味があるのだろうか。いやSというべきか。
睾丸やその間、先を舌でねぶっていく姿はなかなかエロい。中性的な顔立ちに粘ついた先走りが付着していくのは、どうにも煽られる。頭を再度撫でると彼はご機嫌に性器を自身の小さな口の中へ捩込んだ。
ラストスパートをかけたいらしく、無遠慮に性器を口の中に招き入れる。彼はとことん慣れているらしく、いつもながらえずきながら喉まで入れられるのには戸惑ってしまっていた。商売女だってこんなには尽くさない。
喉が痙攣しているのを亀頭に感じながら、唇や指先で刺激され眉根を寄せる。すぐに俺は情けない小さな短い声を上げて精液を吐き出した。鬼柳さんはわかっていたのか、少し身を引いて喉でなく咥内で精液を受け止める。
わななく彼の咥内から萎えた性器を引き抜くと、だらりと開いたままの唇から精液が糸を引いて落ちた。すぐさま控えめな咳込みが聞こえる。忘れないように彼の頭を撫でて、頬も撫でた。

「すみません、無理をさせてしまって」

「ん、ん……」

そんな事はないと言いたいのか、ふるふると頭を振られる。咥内で弄んでいるらしい精液を吐き出すよう言うと彼は渋々精液を吐き出した。AVじゃないんだからそういう無理はしなくていい、俺は昔からそういうAVのシメを理解出来ずにいる。飲まれて気分がいいとは、全くわからん。

唇から顎にかけて垂れた精液と、顔に塗れている先走りの液をテーブルに置いてあるウエットティッシュで拭って遣る。黙って受けている端正な顔立ちを覗き込むと愛しそうな笑顔が言葉は無しに見上げて来た。

純粋に可愛い人だとは思う。だが別に好きではなかった。フェラチオはかなり上手いので性処理にはとても良いし、言えばなんでも与えてくれる。食事も大体のリクエストは聞いてくれた。

あともう少しして、外に行きたいと言おう。外の町とかでなく、例えばネオ童実野シティなどだ。恋人同士だと信じている彼はあっさり認めてくれるに違いない。
そうしたら後は簡単だ。金をいただいて好き放題。一年か二年か、はたまた一ヶ月か、暫くしたら逃げればいい。

「らも、ん」

まだ精液が絡んでいるのか、少し舌足らずに鬼柳は言う。愛しいものを見上げてくるそれに正直あまり悪い気はしない。
だがそれだけだ。愛しくはない。床にぺたりと座り、ソファに座る俺の太股へ頭を寄り掛からせる姿はそれなりに可愛い。
だがそれだけで、愛しくはない。

綺麗な水色の髪を撫でると目を伏せて彼は喜ぶ。ただ黙って受けるだけだが、喜んでいるのがよくわかった。可愛らしい。
それだけの筈だ。愛しくはない。

だが最近少しおかしい。


彼はフェラチオしかしない。セックスをしないのだが、だがフェラチオをしただけで勃ってしまう彼に最近は自慰をさせていた。最初こそ恥ずかしがっていたが今では当たり前の流れになっている。
というのも彼は俺に無理をさせたくないらしく、タチだろうがネコだろうが同性上のセックスをしようとしないのだ。俺が言えば喜んでするのだろうが、俺は言わないのでそうはならない。とことん俺に尽くす奴である。どれだけベタ惚れなのか。

「あっ、ぁぁ……あ、ぁっ…ら、もん…」

吐息混じりの控えめな喘ぎが地下室内に篭る。先走りでぐちょぐちょになった性器をズボンから引っ張り出した鬼柳は、上手なフェラチオとは打って変わって拙い自慰でびくびくと感じていた。
もう片手では色付いた乳首を弄る。体中性感帯なのだろうか。いまだ俺の太股に頭を寄せたまま鬼柳は涎を垂らして喘いでいた。

「可愛いですよ」

「ふっ、ぇ…あぁっぅ……ぅ…ぁ」

涙の膜を目に浮かべながら、虚な眼差しでこちらを見上げて来る。どれだけ感じてしまっているのだろうか、たかが自慰で。
まあ俺が見ているからなんだろう。真っ赤な顔はひたすら俺を見上げている。

そうだ。最近おかしいというのはこれらだ。
いくら中性的でも20歳のれっきとした男相手に、可愛い、だなんて。変だろう。それにそんな奴が足元で自慰をしているのを眺めてムラムラするなんて、変だろう。
というかまず自慰をさせる時点でおかしかった。さっさと部屋に帰らせてしまえばいいのに、何故わざわざ足元で自慰をいつもさせているのか。

あまり考えたくなく思え、ふるふると頭を振った。が、彼の痴体に反応してしまったらしい萎えたままで露出したままだった性器が、少し勃ち上がってしまうのがわかり、気まずくなる。太股に縋っていた鬼柳は少しして気付き、やんわりと笑顔になった。

「ん、ぁっ、らも、……ん」

すり、と太股に頭を撫で付けて彼は小さな唇を俺の性器へ寄せる。幹にちゅとキスをして、遠慮なく先端をくわえ込んだ。

俺はその頭を撫でて、瞼を閉じる。

「好きだ、京介」

違う違う違う違う。これは鬼柳京介を良いように言いなりにする為であって。
言い訳がぐるぐると回る頭が熱いのは思考回路が大変だからなのか、彼のフェラチオが気持ち良いからなのか。

どちらにしろ、先程出た言葉はあまりに優しく甘い。

「あっ、ぁぁっ、ぁ…イ、っ……ぁあぁッ…!!」

片手で俺の性器を握り込んだまま鬼柳は達した。床に精液をぶちまけて肌を上気させて、はあはあと息を浅くしている。
しかし射精の余韻で虚ろな瞳のまま、彼はすぐに俺の性器にしゃぶりついた。ひくんと腰を震わせながら、頭の芯がぽーっとしているのか、あうと唸りながら性器を刺激する姿を見下ろす。
俺はあっという間に射精してしまった。亀頭に唇を寄せていた彼の綺麗な顔へ。突然な事なのと、まだ余韻でほうけていてぽかんとする鬼柳の頭をなぜる。
そうすると彼が反射的に笑顔になるのを俺は知っているし、正直好きだ。

最近すごくおかしい。
彼が地下室に来ると嬉しい、彼が可愛いくて足らない。
しかも嬉しい可愛い、じゃない、すごく嬉しいし可愛いのだ。

どうかしている。


おかしい。




*




鬼柳さんの粘り勝ち。
ラモンさんの根負け










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