愛惜リケッチア




※性的描写有
※絞首表現有




長くて綺麗な灰色の髪が寝台の上で舞っている。じりりと音をたてて白いシーツと細い背中の間で擦れるそれを、遊星は好んでいた。
鬼柳の長く薄くさらさらと綺麗な髪が、鬼柳の敏感であえかな一挙一動で、鬼柳の普段眠るスプリングのきいた寝台と、鬼柳の細く白い触り心地の良い背中に擦れる。それだけでひどく気分が良かった。

「っゆ、ぅ…せぇ」

「…鬼柳」

「もっ、ゃだ…ゆーせっ…」

「鬼柳、もう少し、だ、頑張ってみよう?」

「っぅ…ぁ…ぅ」

ふるふると、鬼柳は唇を泣きじゃくる子供のように下へ歪ませ、ボロボロと涙を流して首を横に振る。遊星、遊星、と、何度も名前を呼ばれ遊星は息を飲んだ。駄目だ、これに負けてはいけない。だが顔を真っ赤にして泣きながら名前を呼ぶ鬼柳の顔は、ただ貪欲に乱れていて遊星の欲を過激に煽っている。びく、と、ナカで遊星のそれが容量を増したのに鬼柳が過剰反応をした。
鬼柳はそれが堪らなかったらしく、下唇を噛んでシーツを握り締めて体をびくびくと痙攣させている。だが、彼の性器は射精をしていない。カウパーは下肢をどうしようもなく濡らしているのにも関わらず鬼柳は一向に射精を迎えなかった。
遊星はその理由を知っているし、どうすれば良いかも知っている。だがそれを実行するのはどうしても避けたかった。

「っひ、ぁっ…ぁ…ゆぅ、せっ…」

「鬼柳、ほら、どうだ?」

「んっ…ぁあ、っゃぁあっ…」

遊星は自身が先に達してしまいそうなので動きを止め、鬼柳の性器にささくれ立った指を絡ませ扱いてやる事にした。のだが、やはり一向に達する気配はなく、むしろ出せないのに酷く敏感になった性器をいじくり回されてどうしようもなくなっている。
涙の止まらない瞳で、長い睫毛をしとどに濡らしながら鬼柳が遊星を見上げた。助けを乞うそれに、遊星は居心地が悪くなり、しかし目を反らす訳にもいかず生唾を飲む。

「っ、むり、だっ…ゆう…せ、助けてくれ、よぉ……」

「……鬼柳、俺は…」

「っ…ゆうせぇ…」

「……俺は、もう」

今日は、今日こそはきっとと遊星は思っていた。今日こそは鬼柳に痛い思いをさせずに射精をさせてやりたかった。
昔は無理せず出来ていた。チームを組んでいた頃は、受け身だという事で勿論無理はさせていたが、性器をいじれば普通に射精をしていた。
いつからだろうか。いや、遊星にはわかっていた。何故鬼柳は普通にイけなくなってしまったのかは。そして誰のせいなのかも。

射精が出来ず辛い快楽に苛まれた鬼柳は体を震わせて肌を上気させている。遊星はその体を優しく優しく抱きしめて、そしてこれ以上なく慈しむ形でキスをした。下唇を食み、舌を差し入れて呼吸を奪う。
だがそれすらも手酷く敏感になっている鬼柳には辛いらしく、悲鳴めいた声が漏れた。唇を離し、耳元で愛してると囁いて遊星は鬼柳の腰を引き寄せる。ごりゅ、と音がして奥壁に至ったのに細い体が跳ねた。
遊星は一度だけ辛そうに瞼を閉じて、期待に潤む鬼柳の瞳を直視出来ないまま、その細く白い首を見遣る。
そしてそこへ自身のごつごつとした手の平を添え、深呼吸をした。遊星の大きく色黒で立派な手の平に掴まれた鬼柳の首は、今にも折れてしまいそうなくらい頼りなく見える。

「鬼柳」

「ゆう、せぇ……ゆ、せ…」

ああなんて幸せそうな顔をするんだ鬼柳。遊星は泣きそうになりながらも同様に鬼柳に笑顔を見せて遣った。
そして添えたままだった手の平に、力を込める。ぐ、と、右手でシーツに押し遣り左手で握り締める。きゅ、と唸る鬼柳の喉仏を親指の付け根で押すとナカが嬉しそうに遊星の性器を締め付けた。
酷い罪悪感の中で遊星は腰を揺する。呼吸が出来ずもがく鬼柳を前に、涙を流しながら遊星はただひたすらに鬼柳の腰に自らの腰を押し付けた。

やがてひくひくと鬼柳の喉が痙攣して、彼の目の焦点が合わなくなり始めたのを涙でぼやけて視界で判断し、遊星は手の平を離す。そして自由になったその手で鬼柳の薄い腰を掴み、激しく打ち付けた。
気道が戻った喉が噎せ、鬼柳はひゅっと音を出してから目一杯吸い込んでしまった空気に激しく噎せ込む。
鬼柳は既に射精をしていて、遊星も苦しそうに噎せ込む彼のナカへ射精した。

「っはっ…ぅっ…ぅ…」

「……鬼柳、愛してる…愛してる…」

呼吸を忙しく繰り返し疲労した鬼柳は、だらんと体の力を抜きまだ快感に身を震わせている。遊星はただ泣きながら鬼柳の体を抱きしめていた。

鬼柳はダークシグナーの一件を境に、遊星に殺されなければイけなくなってしまった。精神的な問題なのか、身体的な後遺症なのか、両方か。なんにせよ鬼柳は遊星に首を絞められ死にかけるとこれ以上なく気持ち良く、ようやっと射精ができるのだという。
遊星は鬼柳に様々な事を提案し、試したが、何もかも駄目だった。鬼柳は何を試しても射精出来ず、やはり遊星に殺されかける事でのみ射精が出来る。

彼にとって、鬼柳にとって遊星という最愛の人間に人生の最後を言い渡されるのは限りのない幸福であるのだと本人は気付いていた。
だが、遊星はもう鬼柳を殺したくなかった。それがセックス上で行われる擬似的な行為なのだとしても、彼の細い首を絞め苦しんでいるのに性的行為を続けるのが。なにより苦しんでいる鬼柳のナカへ射精してしまうのが、遊星には耐え切れなかった。

「ゆう、せい」

「……鬼柳」

鬼柳は愛しいものを見る目で遊星を見上げる。だが遊星は、どうだろうか、鬼柳を見る目は独占欲で淀んでいないかが遊星には不安だった。
鬼柳を殺したくないと、もう失いたくないと強く思う反面で、遊星は鬼柳が自身の腕で苦しむ事に愉悦を覚えている。鬼柳はもう他の誰とのセックスでもイかないのだと、満足しないのだとそう考えると理性では否定する反面喜んでしまっていた。認めたくないが事実である。

「鬼柳、愛してる…」

「…おれ、も…」

殺されようとしないとイけないだなんて、歪んでいるだろうか。そんな人間を抱いて満たされるのは歪んでいるだろうか。
だがそれは遊星にも鬼柳にも紛れも無い愛情なのだから、歪んでいると言い切るにはあまにりも理不尽だろう。



*



お互いが幸せならいいんじゃないかな

っていう言葉で放ると不気味な愛情に見えてしまうような遊京が好きだったりします







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