新入りの女がメソメソ泣いてて、腹が立った。
さっきまでジャックジャックと歪な笑みを浮かべていたくせに、何を泣くというのか。しかも声を上げるようなそれでなく、声を押し殺して泣いていたから。それがムカついた。

自分を見ているような気分になるから。蹴ってやりたい。自分は蹴れないから、この女は代わりになる。だけど蹴った所で何にもならない。寧ろミスティにお小言言われるだけだろう。止めておいた。

「何泣いてんだよ」

「…なによ…」

「こっちが聞いてんだよ。質問に質問で返すなクソアマ」

床に座り込んでいるそいつを見下ろす。下がった眉に比例して歪んだ瞳で見上げられる。立派な黒い目からはボロボロと涙が溢れていて、やはりムカついた。

「貴方に理由を話す必要があるの?」

「…ないな。ただスッゲーむかつくから泣くんじゃねーよ。犯すぞ」

言うと女は俺を睨んだ。おおいっちょ前な睨み方すんのな。感心感心。
女は一度ぐいと涙を拭い、それから立ち上がった。ヒールのお陰で俺の鼻先辺りにまで来ている黒に縁取られた青い瞳。まだ睨んでいるそれを一瞥、つい口角が上がる。

「新入りは馬鹿女で気が強いみたいだな」

「貴方みたいなのが先輩だなんて認めたくないわね」

「光栄だ、クソアマが」

一度強く睨み、女が右手を上げた。と同時にその右手首を捕える。他人に触れたのは久しぶりだと細い手首を強く締めた。
つ、と痛そうな声を上げる女を見下ろし、それから手を離す。

「平手打ちは結構痛ェんだよバーカ」

女は何か言いたげに解放された手首を摩った。痛そうにしながら、しかし何も言わずに俺を睨んで舌打ちした後、踵を返す。カツカツとヒールの音を立てながら、女はどっか行った。

「……あー、暇」

ルドガーん所行くか、と一人頷く。さっきのクソアマの泣き顔を思い出して、むしゃくしゃした。
女は泣いても許されるから、腹が立つ。泣いても絵になるから、腹が立つ。男はそうは泣けない。



***



女嫌いな狂介君とジャック大好き過ぎて困惑するダーリー。
女相手にはガラ悪い兄さん化してしまう。なんでだろう。ああ、狂介は甘やかすより甘える派だからか(^ω^)

にしてもとある方からインスパイアされまくっとる俺。







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