閑寂エチュード




※最初から最後まで致しております


ひっくと子供のように泣くので、ぎゅうと強く抱きしめて遣る他を思い浮かべる事が出来なかった。実際子供が目の前で泣いていたのなら、俺はそうはしなかっただろう。ああそうだ認めよう、その相手が鬼柳だからそうしたまでだ。認めてやろう。それで気が済むのなら。

「っジャッ、ク……」

堪らなそうに鬼柳は抱きしめ返して来る。縋るようなその仕種に、怒りや嫌気を感じなかったのは鬼柳との付き合いが長いからだ。
幼なじみであるこいつにそんな事で怒る程心は狭くはない、本当だ、それだけだ。

「ジャ…ク、…じゃ…っ」

ひ、と鬼柳は引き攣った声を上げる。肩に密着した鬼柳の唇はわなわなと震え、涎を垂らしている。声と嗚咽とを繰り返す鬼柳が、可哀相で、ただそれだけだ哀れであったからぎゅうと抱きしめて遣った。
うう、と、云う声は苦しいばかりだからと出ている声ではないだろう。しかし辛そうだ。そうだ、だから俺はこうして鬼柳の背中を撫でて遣っているんだ。あまりに鬼柳が、辛そうだから。

「あっ、ぁ……じゃ、く…」

辛そうな声の中に、甘い声が混ざる。びくっと痙攣する鬼柳は涙をボロボロと流しながら俺の名前をひたすらに呼んだ。
切ないそれに呼応した訳ではなく、堪らないとばかりに背中に爪を立てられて憤慨をしただけだ。だから俺は、鬼柳の両手を両手で握りしめた、いや、押さえ付けた。それだけだ。嬉しそうにぎゅうと握り返されたのにキスで返してやったのは、子供をあやす用法である。両手は塞がっていたから、口でするしかあるまい。

「はっ…ぁ、…や…ッも…」

いやいや、と、鬼柳は頭を振る。上気した真っ赤な頬に何本も涙の跡が残っていた。新しい涙が落ちるのと同時に鬼柳は俺の名前を呼ぶ。好きだ、愛していると泣きそうになりながら声を絞り出した。
俺はと言えば、嫌いではないと伝えるか否かで下らない葛藤をする。そうだ嫌いではない、だがそんな事わざわざ伝える必要はないだろう。嫌いではない、だなんて、わざわざ。

「…好きっ…だ、ジャック…好き、っ…ひゃッ…イ…っく…ぁっ」

びくっと大きく痙攣をして、鬼柳は俺の手の平をぎゅうと握り締める。涙をボロボロ流しながら、嫌だと呟きを繰り返しながら白濁を吐き出した。
そんな鬼柳の細い腰を抱え直し、俺は身を進める。ぐちゅと結合部から水音が響き、S字結腸まで至った精器がごりと生々しい音を立てた。鬼柳が達したばかりの華奢な体を反らしながらひっと悲鳴を噛み殺して、驚愕と快感とをやり過ごしている。攀る両足が俺の腰に強く絡まるのを、気分良く見下ろした。

「……鬼柳」

「はっ…ひ、ぁ…ジャック…?っ…ジャック…ぁっ」

「気分は、どうだ?」

「ぁっ…ん、ぁ…嬉し、ぃ…幸せ…っジャック、…好き、だ…」

何度名を呼ぶつもりなのだろうか。幼なじみの言葉通り酷く嬉しそうな顔に、こちらまで嬉しくなる。抱き寄せ唇にキスをしたのは、ただ鬼柳を……ああ、もう言い訳は止めよう。
なんと言い訳をしようとこうして緩む頬の腑抜けた面で俺が鬼柳を抱いているのは事実だ。鬼柳にキスをして、鬼柳を愛しく思うのも紛れもない真実だ。
抱き寄せたのは愛おしいからだ、手を繋いだのは愛おしいからだ、嫌いではないと伝えるのを渋ったのも愛おしいからだ。結局のところ俺は鬼柳が大好きだ、愛している。頭の中でいくら俺がそれに言い訳をしたって、鬼柳にはそれが嫌という程伝わっているだろう。
でなければ鬼柳の中に二度も精液をぶちまけたくせに、まだ元気にセックスを続けたりなんかしない。



*



ヤオイとはまさしくこれさ!バッ

もうVJジャ京のらぶらぶせくろす本当に書いてて楽しくて仕方ないです!もうこいつら本当に可愛い…私が物書きで良かったと感じる瞬間の上位にこういう事がランクインしてます。VJジャ京にらぶらぶせくろすさせられるという瞬間です…はい…。

本誌を読んで、絶対王者は鬼柳さんにツンデレで、鬼柳さんはジャックにデレッデレなそんなイメージがこべりついてしまいました(^q^)


エチュード:習作、試作、練習曲




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