残像アリア




「なあ、ジャックっていつ頃から決闘始めたんだ?」

「それを聞いてどうする」

「どうも何も。知りたいから聞いてるんだよ」

「………」

初対面のくせして名前まで呼んで馴れ馴れしい奴である。ジャックはガラス張りの窓の向こう側にある広場を見て、溜息を小さく吐いた。舌打ちをしなかっただけまだ可愛いげがある方なのだが、鬼柳にしてみればどちらも気にならない事らしい。再びジャックに無意味に近い問い掛けをしていた。

今日はジャックと鬼柳とが決闘をする試験の日である。しかし今二人は待合室でぼんやりと時間を潰していた。
試験は実行したにはしたのだったが、中止という名の休憩が入ってしまったのだった。理由はと言えば明確かつ修理が面倒な、フィール発生装置の故障である。
子供同士の初期段階の試験だからと甘く見たテストであったが、0番と11番の決闘はその判断がぬる過ぎたものだった。もっと機能性の優れた装置を設置させようとしている、所長の阿久津の忙しない姿を鬼柳は楽しそうに眺めている。

まだ二人は子供である為、機械の単なる故障としか捉えていなかった。メンテナンスが甘いなと考えるジャックは他の子供より達観した思考を持ってはいたが、事実を微塵も想像だにはしていない。

「にしても変だよな。他の奴らのは普通に動いてんのに」

「……、…」

ジャックは鬼柳が納得が行かないとばかりに眺めている、他の子供達の試験決闘を見てみた。低級の応戦が続く決闘は退屈そうに続いている。ジャックはすぐに興味を無くし、新しい機材を運び終わったらしい、先程まで自分達が決闘をしていたフィールドへ目を遣った。

そして少し思案した後、横の何が楽しいのかニコニコとガラスの向こう側の部屋を見る鬼柳を見遣る。
今でこそ普通の子供より人懐こく、元気で無邪気に見せているが、ジャックにとって同年代であれだけ決闘のレベルが高い人間に出会ったのは初めてであった。
途中で残念にも中断させられてしまった決闘を思い出し、再び鬼柳を見遣る。本当にこいつは先程まで俺と接戦を繰り広げていた奴なんだろうか、と。

先程の決闘の中断のタイミングは、ジャックが高レベルのモンスターを召喚し攻撃をした後の瞬間であった。鬼柳の場には低級だが攻撃力の高いモンスター。そこで鬼柳は伏せカードを使用し、効果で攻撃を打ち消そうとした。それにジャックがチェーンをかけてトラップを使用し、鬼柳が墓地のモンスターの効果を更にチェーンした、その瞬間。
互いに凄まじく集中をしていた瞬間だ、とジャックは眉根を寄せる。つまり、と漸く思い至り咄嗟に隣の鬼柳を見遣った。

「なあ俺思ったんだけどさ、俺とお前の決闘が白熱しすぎたから爆発したんじゃないか?」

あれが、と鬼柳は真剣な表情をしたままのジャックに指差しで撤去されて途中のフィール発生装置を指し示す。
まさしく今ジャックが考えていた事であった。無意識にぽかんと小さく開いた口をすぐさま閉じ、ジャックは暫く間を開けてから鬼柳を感心の目で眺める。

「どう思う?」

その時からだ。ジャックが鬼柳京介という人間に興味を持ち、唯一闘いたい相手と意識し始めたのは。



*



初っ端から抜きん出て才能ある二人とか書きたくて書いたんですが、こうなっちゃうと他の子達が可哀相でならないですね。

鬼柳さんとジャックってなんだかんだで似た所の多い、しかし肝心な場所が真逆っていうそんな感じがして萌えます(^q^)


アリア:叙情的な独唱歌曲・小歌曲





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