彼の愛情の尊い乃至




※裏ではないですが、露骨に下品な表現があります。
※そして先に謝ります、大分リクエストと違う話になってしまいました。すいませんでしたorz






なんでかなと思う。何にって自分にだ。
自分は何故こうなってしまったんだろうか。馨介の世話になるようになって一年が経った。昔から自分がどこかアブノーマルなアホ野郎だってのはよく知っていた。知っていたし理解もしていて、正直そういう異常なところが大嫌いだった。異常だから何にも馴染めずにいて、でもその馴染めないっていうのは案外気に入ってた。…それがまた、異常なんだろう。とは自覚してる。

自分が異常だと自覚し始めたのは中学に入ってからだ。まだ馨介達とは離れて暮らしていた時の事で、それまでは普通の健全な男子だったと思う。少し気になる女子に意地悪をして、保健の授業で少しそわそわして、少年漫画にわくわくして、新型のゲーム機に興味津々な、本当に普通だった筈だ。

両親が死んでから俺が引き取られたのは親戚の叔母夫婦の家だった。昔からかなり仲が良く、住まいは家業に合わせた田舎ではあったが広い場所だった為に心良く受け入れてくれたらしい。本当のところはどうだかわからないが。だがまあ叔母は俺に良くしてくれていた。そこには強く感謝している。

叔母さんの旦那さん、つまり、義叔父さんが俺の母親…叔母さんのお姉さんに好意を寄せていた時期があったっていう話は小さい頃から知っていた。親戚中で声に出してはいけない、でも皆知っている事実だった。それから俺が、俺達兄弟が髪質以外吃驚するくらい母親似なのも自覚済みで親戚中わかりきっている事だ。
だから、と言うのはあんまりな話だけど酒が入った義叔父さんにされた事は仕方ないのだと思う。あまり思い出したくはないが、別に犯罪になる程の事ではなかった。と、思う。
翌日に平謝りをして来た情けない大人がくれたのは、欲しかった新型ゲーム機が買えるくらいのお金だった。義叔父は家業を嫌な顔せず熟すようなかなり良い人だったし、子供相手に最低な事をしたととても真剣に反省をしていたように今でも思える。
でも子供だった俺は結構、かなり、ショックだった。それも今でも覚えている。それと同時に、握らされたお金を眺めて喜んでいたのにも気付いていた。


その辺りから色々最低な人生を平気な顔で歩いていた気がする。でもあまり叔母さん達に迷惑は掛けたくないからと、ふざけた話だが気を遣っていた。
新型のゲーム機だけでなく、色々な新しい物を持っている俺にどうしたのと不安そうに尋ねる叔母には「兄が送ってくれた」と言っていた。そこまで嘘ではなかった。馨介は月に一度、まあゲーム機程高価ではなかったが、赤貧なバイト学生だろうに服やらなんやらを送ってくれている。叔母は安心したように、「良かったわね」と言ってくれた。それに良心が痛まなかったかと言うと、嘘になる。

可愛い女子にへらへらと話し掛けて、保健の授業を鼻で笑って、少年漫画を熱中して読む事はなくなって、ゲーム機より高価な物が欲しくなるようになった。ああ変わったなぁと思う、そこでようやっとそう感じた。そう感じてからは一層異常に染まるのが楽しかったのは、かなりよく覚えている。
哀れな話だけども、可愛い女子は恋愛対象に見れなくなっていた。正直俺の方が可愛いんじゃね…は、流石に自惚れだろうか。けどクラスで一番可愛い生徒会書記の女子が片思いしているバスケ部のキャプテンは、俺に金渡して毎日迫ってるんだから、なんとも自惚れてしまうだろう。その頃にはああ自分は異常だなと毎日痛感していた。校内の悪い噂が沢山の中の都市伝説程度の噂で収まっていて助かったとは、最近やっと思うようになっている。大分遅い話だが。

なんだか随分と話が昔に戻ったな。すぐこうなるから軽い頭だとは自覚してる。
まあとにかく俺という鬼柳狂介君は昔からお金の為に同性にも異性にもへらへらして、媚びを売っている人間だよという話だ。きっかけは義叔父だったがただのきっかけだ。結局自分で此処まで来たんだから。



「おはよー狂介、今日は朝早いなー」

「てめぇに言われたかねーよ万年寝坊野郎」

「反抗期か!いいぜ兄ちゃんは全力で受け止めるからな!」

「……馨介は車検がどーので出掛けた」

「スルー!いいぜ兄ちゃんの余裕見せてやるからな狂介!」

朝っぱらで部屋から起きて来たばっかのくせに、がたがた煩い兄を横目にしながらトースターに入れるのが面倒になってそのまま食すことに相成った、少し固い食パンを食べる。よくよく袋を見ると賞味期限が明日だ。どうりで固い訳である。

しばらくして、洗面所から出てきた京介は台所に入って行った。今朝は和食な気分らしく、自作の調子外れな白米の歌を歌っている。…音量を低めにしているニュースの内容が聞こえない。

「白米ない!」

「昨日炊かなかったろ」

「え、当番誰だっけ?」

「京介」

「………あう」

炊飯器を意味も無く開け閉めする音が台所から聞こえて来た。そういう行為が家電をダメにすんだよ馬鹿兄がと口を開くのも面倒で、食パンを口にほうり込む。
たすたすとアホな足音をたてて京介が台所からリビングに入って来た。着崩した寝巻はアホさを強調しているように思える。

「へいへい狂介、食パン取って」

「食パンあと一枚しかねーけど」

「一枚じゃ満足出来ねぇけど!?」

「いや知らねーけどよ」

本当に騒がしい兄だ。食パンの袋を手渡し、受け取った京介は枚数を伝えたにも関わらず未練がましく中身を確認している。そして一枚だと確認した後、不満ありげに台所へ引っ込んだ。トースターを乱雑に開ける音が聞こえる。だからそういうのが家電をダメにするんだっつの。

「………京介は、今日どっか行っちまうのか?」

「ん?なんか言ったか?」

ひょっこりとダイニングキッチンのテーブルから顔を出す京介を見て、ついつい眉根を下げてしまう。ボサボサな髪の毛は飯を食ってから整えるんだろうか。

「……今日出掛けんのか?」

「いや?予定ねーよ。遊星とかから連絡来たら話は別だけど、まああいつら皆それなりに予定あるみたいだから来ない…っつかだから俺は予定がねーんだけどさ…」

ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ。よく喋る兄である。
遊星達以外にかなり親しい人間がいないので、京介は彼らとの約束が無ければほとんど暇人だ。成人したって四人でつるむんだろう、なんだか簡単に想像出来る。

「あ、狂介は?なんか予定あんのか?」

「…いや、別に」

「じゃあ映画見ようぜ映画!昨日クロウに借りたんだけどクロウが“最高に良い映画だけどお前に理解出来るか怪しいから、出来たら狂介か馨介さんと見ろよ”って言ってたんだよ!見ようぜ!」

「お前それ怒っていいんじゃねーか?」

「狂介ってクロウと趣味合うし!絶対面白いから!な!」

「………まあ、別に、予定ねーし構わねーけど」

「よっしゃ!じゃあ待ってろ!」

いや飯食ってからにしろよ、という言葉を言う前に京介は素早く自分の部屋に引っ込んでしまった。バックからDVDを漁り探すのだろう。まだ着替えてすらいないぞあのアホ兄。
ちん、とマヌケなトースターの音が聞こえる。確か京介は焼きすぎは嫌いだった筈…と考えて、溜息を吐きながら台所へ向かった。

(……本当に異常、気持ち悪ィ。アホは京介じゃなくて俺だ)

食器棚から取り皿を出し、焼けた食パンを乗せる。馬鹿みたいにジャムを塗りたくる京介の姿を思い出し、冷蔵庫から京介がいつもパンに塗っている一式を出した。
先に食パンをリビングに運び、ジャムやらと京介が必ず朝に飲む牛乳を運ぶ。一度京介の部屋の方向を確認してから、再び台所に行きコップまでかいがいしく持って来た。
先程まで座ってい椅子に座り、また深く溜息を吐く。吐き終わった辺りで部屋から京介が戻って来た。

「なんか時間かかったな」

「いや昨日忘れないようにバックから出したのを忘れちまってて、って!パン用意されてるなんだこれ!」

「…用意したんだよ」

「うっそマジありがとうな狂介!愛してる!」

「……早く食えよ、んで着替えろよ。映画はその後な」

「おう!ありがとう!」

愛してるのはこっちの台詞だアホ兄貴が。テーブルに置かれたDVDを手に取り、なんともないふりをしてパッケージを眺める。

俺は異常だ。同性に女みたく扱われて喜んでいる、金を貰って充足感を覚えている、同性が自分に夢中になるのが堪らなく楽しい。昔はそれだけだった。それだけの異常加減だった。

いつからだろうか、血の繋がった顔も背丈も声も肌も目も髪も何もかも似通った、いやほとんど同じなこの兄という存在を愛してしまったのは。この一年間のどのタイミングだったんだろうか。一緒に暮らしてすぐ、でないのは確かだと思うが、よく覚えていない。ただ今現在何よりも愛しくて堪らなかった。

そんな自分が気色悪くて毎日吐きそうだ。

馨介の事も好きだ、しかしそれは兄弟という仲での話である。普段は馨介にかなり悪い態度を取ってはいたが、馨介と自分の命のどちらかしか助からないだなんて選択肢があったのなら、少し悩むかもしれないが最後には馨介の命を助けたいと思う。そう、馨介は兄として愛している。

しかし京介は違う。何故同じ愛情ではないのだろうか。全く同じ顔なのに、何より兄弟だ、同じ腹から同じ精子と卵子での受精から産まれている。同一でもおかしくない存在なのだ、互いに。なのに、何故なんだろうか。

「今日雨だってよ〜休みで良かった」

「………そうだな」

「あ、つか俺洗濯したい物あったんだよ!部屋干しは正直嫌だなぁ…好かないんだよなぁ…」

「………うん…」

「………どうした狂介?なんかいきなり元気ねぇけど?」

「あ、いや…面白そうな映画だなって…つい、裏のあらすじ読み耽っちまって…」

こちらの顔を心配そうに覗き込んで来る京介から少し距離を取り、じっと眺めてしまっていたDVDケースをテーブルに置く。俺の苦し紛れのごまかしを受け取った京介は、やっぱりクロウと趣味合うよなと上機嫌に頷いた。

(…なんでだろうな…)

また、自分に吐き気がする。子供みたいにはしゃぐ京介の姿が愛しくて堪らない。一学年上である筈の兄が、自分の弟みたいに幼く振る舞う様が愛らしくて仕方ない。

…例えば、例えばの話だ。
京介にキスしたらどうなるだろうか。最近はこればかりを考えている。そうしてからいつも自己嫌悪に陥って、虚しくて、悲しくて堪らなかった。
京介は純粋だから、軽いキスなら受け入れるだろう。なんだよどうした、と、兄貴風を吹かせて笑って、俺の頭を撫でる姿が容易に思い浮かんだ。
それじゃあ普段俺が金を貰う時にするような、最低なものならどうだろうか。やはり京介は純粋だから、隙は沢山ある。後頭部と腰を強く引き寄せれば出来るだろう。赤の他人ならまだしも、実の弟だ。突き飛ばしたり舌を噛んだり蹴ったりとか、そういう抵抗はしないと思う。
呆然とした時に口をポカンと開ける癖のある京介の咥内に舌を入れるのを簡単な話だろう。例えば今したら、ジャムの味がするんだろうか。今牛乳を飲んだから、牛乳の味だろうか。どれくらい咥内を堪能したら、京介は俺を拒み始めるだろうか。

「映画見るならなんかこう菓子とか欲しいよな〜なんかあったっけ?馨兄が昨日買って来た煎餅はパスな、俺もっとジャンクな物食いたい」

よくまあ朝食を取りながら間食の話を出来るものだ。器用である。必要ない補足だが、こういうところも堪らなく好きだ。

正直な話、最近では例えばの話ですらキスでは足りなくなって来てしまっている。
俺が不特定多数の同性にされて来たような事を、京介にしたくて堪らなくなって来た。俺があいつらにさせる時のようにはしない、想像は自由だ。あいつらには避妊具は必ず付けさせていたが、京介を相手にそういう無粋なものは付けたくない。きっと童貞だろう京介の体を暴くのは酷く快感だろう。大層優しくしてやりたい反面、中に精子をぶちまけて凌辱したくもあった。
…京介は、泣くだろうか。同性に、しかも愛しい弟に辱められたら。だが顔も何もかもそっくりな俺は、そうではなかった。いつも楽しんで辱めを受けている。
例えば俺が馨介にされたらどうか、と、京介の立場を考えて同じようなシチュエーションを疑似的に設立して考えた。気持ち悪さはある。同じ腹から産まれた相手とまぐわうのは。だがそこに愛が成立してるなら…とまで考えて、自分にうんざりした。

(……だから、俺は異常なんだ。考え方が他人と同じ物差しだと思うなよ…馬鹿じゃねーの…)

ああダメだ、頭が悪すぎる。我に帰るのが遅すぎる。横にいる京介をいつ押し倒してしまうかを考えると毎日が怖くて堪らない。だからなるべく一緒にいたくない。でも、愛してるから一緒にいたい、当たり前の感情だろう。

「……つかさ、馨介って待ってたらその内帰ると思うんだよ」

「ん?ん、ふ」

「いやいいよ喋んなくて、とりあえず飯食ってろよ」

口一杯にパンを頬張る京介の姿を見て、苦笑する。胸が痛くて堪らない。
あまり二人きりでいない方がいいに決まってる。いつ京介の体を抱きしめてしまうかわからない。京介を怖がらせるのは、苦しませるのだけは嫌だと思う、思っていたかった。それだけは手放したらいけない気がした。

「…だからさ、馨介帰ってから映画見ないか?最近あんまり三人揃ったりしてねーし」

「ん!んん、ん」

「いやだから喋んなって、ゆっくり咀嚼しろよ、喉に詰まらすぞ」

俺の提案にかなり嬉しそうに頷く京介の頭を撫でる。珍しいスキンシップに少し驚いたらしい京介は、目を瞬かせた。しかしすぐににっこりと嬉しそうに笑って、兄貴風吹かせて俺の頭を撫でてくる。
愛しくて、愛しくて、ついこちらも笑ってしまった。それを見て京介が口の中の物をようやく飲み込みながら上機嫌に体を揺らす。それに気付いて、俺は調子に乗って身を乗りだして京介の額にキスをした。

「わ、」

パンを飲み込みきった京介が、ひときわ大きく吃驚した声を上げる。俺はすぐさま京介から離れて、やばいやばいやばいやばいと頭の中でぐるぐる考えた。
おかしいだろう。あんなにも普段つんけんしている弟が兄にいきなりデコチューなんて、馬鹿か俺。いやでも口にしなかっただけ俺の理性よく頑張ったというか、いや、違う、そうじゃない今の論点は。なんでデコチューしたんだ、言い訳を、考えよう、すぐに。

「京介、俺…」

「は」

「……は?」

額を触りながら、京介はポカンとした顔で俺を見ている。俺はといえば心臓がばくばくだ。
普段馬鹿みたいに嘘をしゃあしゃあと言う唇がうまく動かない。かなり場違いな話だかああ俺京介が本当に大好きなんだなと痛感する、動揺しまっくている、有り得ないくらいに。

少しして京介はぱっと額から手を離して、身を乗り出して俺の肩を勢いよく掴んだ。嬉しそうに満面な笑みを浮かべた京介の顔が目の前で揺れて、思わず赤面したのが自分でもわかる。がたんと椅子が倒れた。

「は、反抗期の弟がデレた!」

「……は?」

「兄の愛が!伝わったんだな!な!狂介!?」

「……あ…えと、う…ん…?」

「狂介!」

がばっと首元に抱き着かれ、がくんがくんと揺さ振られる。ああ同じ市販のシャンプー、同じ安い石鹸、同じ柔軟剤入り洗濯洗剤の筈なのに、俺より何万倍も良い匂いがするように感じる。どさくさに紛れて京介にきゃうと抱き着き返し、耐え切れずに小さく小さく溜息を吐いた。俺よりも先に妙な奴に犯されちまいそうなくらい純粋だこのアホ兄貴。いやもう大バカ兄貴だ。

でもそういうところがやはり愛しいから、悲しくて悲しくて堪らない。



*

「現パロで京介と狂介。出来たら裏要素を」との事で、以上になります…!
はいすいません!裏要素ゼロではないですが無いに等しいですね…!しかも京介と狂介、というよりは圧倒的な狂→→→京という…!orz
ただ感謝の気持ちはかなり込めました!いやだからなんだよって話ですよね!orz

ありがたいコメントと、お祝いのお言葉もありがとうございました…!これからも頑張りますので、どうかよろしかったら応援して下さい!

ではお待たせしてしまいすいません、リクエストありがとうございました!orz



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