※微妙に性的描写有


動く気配の無かったルドガー。
俺の方を一切見ないで椅子に座っていた。ルドガーの正面に顔を出して、無愛想に下へ曲がった唇にキスする。冷たい。

「愛してる、ルドガー」

「そうか」

ルドガーは色無い声質で言う。
無抵抗だからもう一度キスした。どうでも良い様子で腹を押される。仕方なく半歩下がった。

「愛してる」

「それは分かった」

「なんで分かってくんねーの?」

「分かったと言った筈だが」

「分かってねーよ」

分かってない。絶対分かってない。
マントから垣間見える腕に、床に座ってキスする。愛してる愛してる。こんなに愛してるのに。

「死体は恋愛感情を抱かん」

「…」

死体。ルドガーは言うと俺の頬に触れる。冷たいとか冷たくないとか。よくわからない、そう、死体だもんな。肌は生前よりずっと青白い。

「元来、恋愛感情とは相手の遺伝子を後世に残したいという本能から起きる。だが死体が遺伝子を残す必要などはない」

「…」

難しい話をするのな。ぺたりと床に完璧に座り込む。
ルドガーは律儀に俺に目を合わせて説明を続けた。

「加えて、同性では遺伝子は残せん。キスは性交渉の前準備だろう?何故、男で死体の貴様は男で死体の私に性交渉を促す?」

「……せいこうしょう?」

「セックスの事だ」

「…セックス…いやべつにセックスしたいって訳じゃ…まあしたくなくはないけど」

つかアンタの口からそんな言葉出るのな。これ貴重だ。
しばらく考えてると、脇に掌を入れられ、ひょいとルドガーに体を持ち上げられる。死んでから体、軽くなったかな。ルドガーの膝の上に乗せられ、向かい合ったルドガーを見上げた。

「一度死した鬼柳京介。貴様は同性である私に性交渉を望むのか?」

「……うんまあ。ルドガーがシてくれんなら突っ込まれたい。愛してる」

「その愛しているというのが不可解だ」

固い膝の上で身じろぐ。ルドガーが目の前に居るこの体制は珍しい。
俺は今かなりそわそわして、かなりルドガーに突っ込まれたい訳だが、ルドガーは違うのだろう。実験体でも観察するようにルドガーは俺を見た。

「俺、変?」

「さあな」

「なあルドガー、シて」

「少し黙っていろ」

「はいはい………」

ぐいと体を寄せて、無愛想なルドガーの唇にキスする。冷たい。早々に離そうとすると、後頭部を掴まれた。そのまま唇を割り開き、ルドガーの舌が俺の歯列をなぞる。背筋がぞわりとして、背中から腰にかけてがびくんと跳ねた。行き場のない手をルドガーの肩に着いて、口内を荒らすルドガーの舌に応える。
くちゅ、と卑猥な音がして、その度に下腹部がぞわりとした。
暫くは続けたが、最後はあっさりと唇を離される。涙で歪んだ視界と、珍しく暑い頬に吃驚しながら荒い息を整えた。ルドガーを見た。

「……な、んだよいきなり、ノリ気になり…やがって」

「のる訳がないだろう。……なんだ、今ので勃ったのか?」

「え、たっ…て?な……ちょ…馬鹿何して……ッ」

ぐいと腰を引かれ、片手でズボン越しで俺自身に触れられる。
確かに勃ってる。畜生。
脊髄反射で腰を引くも、馬鹿みたいに強い力で腰を引かれた。
ただ触れる、という仕種で俺自身を刺激され、目尻に溜まっていた涙がボロボロと溢れる。

「あっ…ルド、ガ……ぁあ、あ…っ」

「感じてるのか?」

「だって…ルド、ガーに…さわられてるし……やば…い、イく…や、っ…!!」

がくがくと太股が揺れて止まらない。酷く強い刺激に、ズボンすら脱がずに吐精してしまった。力が抜けた体を遠慮なくルドガーの胸元に預ける。

「男に触られて射精するのか。よくわからんなその体は」

「…だ、から…俺、ルドガーが…好き、だから」

「それは更に謎だ」

「……突っ込まれたい」

「かなり謎だ」

身じろぎ、中で吐精した気持ち悪さに唸る。不可抗力で太股の付け根に触れるルドガーのそれは、馬鹿みたいに静かでムカつく。なんで俺だけイってんだよ。

「つかオッサン、酷くね?……暇潰しで青年の性欲と恋愛感情弄ぶなよ…」

「傷付いたか」

「んーまあ、気持ち良かったけど」

「そうか」

「けどやっぱり傷付いた」

「死体には珍しいケースだな、その感情は」

そうとだけ言い、また脇に手を入れて今度は床に下ろされる。
真剣に暇潰しに俺使いやがったこのオッサン。最低だ。



***



死体だからって理解しないルドガーとルドガー大好きな鬼柳が書きたかっただけです。







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