鬼柳が大好きだった遊星の独白


*



 鬼柳が生きている。それがとても嬉しくてならないかった。
 あの時に鬼柳が死んだと話を聞いて俺は何日も何日も立ち直れずに身を縮めてぐるぐると自問自答を繰り返したのだ、何故、と。何故ああなってしまったのか、俺は、俺達はどうするべきだったのか。嗚咽が出るくらいに泣いたのは久しぶりで、本当に本当に苦しかった。心臓が鷲掴みにされているような痛みだった。
 きりゅう、と、小さく名前を呼ぶと堪らなく悲しくて、せめて遺体だけでもとセキュリティ支部へ足を運んではジャックとクロウに連れ戻される。きりゅう、と、また名前を呼ぶ。なんだよと気さくに笑って話す姿、俺へ弟へ向けるような人懐こい笑顔を見せるその仕種が鮮明に浮かび、なのに、もうこの世にはいないのだと考えると、ただ俺の思いはひたすらに空虚でならなかったのだった。


 だが、と、痛む腹部の傷を撫でて、ずきとする痛みに少しばかり眉根を潜める。鬼柳は今や敵という存在である、俺を恨んでいるし何よりも何人もの人間へ被害を加えていた。

―――しかし、生きている

 そう生きているのだ。あの鬼柳が、笑顔が眩しく明るく人を惹き付ける性格で活発ななんでも出来るヒーローのようなあの鬼柳が、生きている、一度死んだ筈がああしてまた地に足を付けて、俺の成長した姿をあの美しい金色の瞳に映して、そうしてあの綺麗な声で俺へ語りかける。それはなんて幸福な事なのだろうか!
 思わず上がりそうになる口角を抑え、息を整えて再び自らの腹部の傷を撫でた。夢ではないと実感出来る鈍い痛みである。ああ、幸せだ。











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