空の青さは、何処も同じだった。何処に立っていても、最大に晴れ渡った空の色は変わらず綺麗な青。
けれどこの辺りは特に空が青いように思えた。昔住んでいた場所より、放浪した何処よりも。

けれど心はあの時よりずっと燻っている。あんなに空は青いのに、綺麗なのに。
よく分かりもしない焦燥に感情が揺れて、押し殺しては感情が死んで行く気がした。

空に手を伸ばしても届かない。遠くて、遠い。意味もなく手が宙を切る。

あ、と色のない声がぽつりと口から漏れた。
と同時に、腕を引かれる。呆然と成されるままにして半歩下がると、ぽすんと人の胸元に背中が収まった。
興味もないようにただ空を眺める。呆れた風に息を吐かれ、背後の人物に抱きしめられた。

「大丈夫ですか、先生」

「……」

は、とまるで夢から目が覚めたように肩が跳ねる。けれどゆったりとした体内の血流に従って、ゆっくり振り返った。
吃驚したように俺を見るラモンに、首を傾げて見せる。

「酒入ってんですか?」

「……いや」

「ふらふら崖に歩いて行ったんで、焦りましたよ」

ラモンは茶化すように笑う。
前方を見ると、確かに先は崖だった。空を見上げる。青い。

呆れるくらいに青い。
ああ、呆れられてるのは俺か。



***



レイプ目鬼柳さんは、自分が何かもわからないくらいボーッとする時があればいい。







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